ムダを捨てるだけで『がんばらない働き方』を実現できるのか?

日本人は「がんばります」という言葉をよく口にします。実際、日本人の労働時間は他国と比べて長いことがわかっています。しかし、日本の労働生産性は「OECD加盟35国中20位」という低い数字です。これまでは、上司からの指示をとにかく「がんばります」と答え手を動かすだけで、通用する時代でした。しかし、技術の進歩により単純な仕事は、ITによる自動化やアウトソーシングなどに代替されつつあります。

ピョートル・フェリクス・グジバチ 氏(以下、著者)は『ゼロからイチを生み出せる! がんばらない働き方』(以下、本書)の中で、日本人の生産性が低い理由を、「がんばり」すぎによる疲弊であると述べています。そして、そのために必要なことは「ムダなもの」を捨てることだと力強く語っています。本書の内容を紹介しつつ、考察します。

このタスク、本当に必要?


みなさんの仕事には、さまざまな「タスク(課題)」があると思います。仕事に必須だと思われているタスクですが、「本当にこのタスクが必要か?」と、突き詰めて考えたことがあるでしょうか? 例えば、次にあげる3つのタスクについて、考えてみましょう。

  1. メール
  2. 会議
  3. スケジューリング

1つ目のタスクは、「メール」です。社会人の中には、一日のうち何度も何度もメールが来てないか入念にチェックしている人も多いでしょう。現在はスマートフォンが普及しているため、外出中や休暇中でも常にメールチェックを怠らない人もいます。著者は、メールばかり気にすることは「ムダ」であると主張しています。メールの目的のほとんどが、「直接会う」「電話をする」「書類を共有」などの方法で代替できるからです。

2つ目のタスクは、「会議」です。著者は、会議の目的が明確でない会議には出席しないと述べています。つまり、議題(アジェンダ)をきちんと準備しなくてはなりません。例えば、会議には、「意思決定」や「情報共有」などの役割があります。しかし、意思決定は権限を持つ人だけが出席すればいいし、情報共有はクラウドで簡単にできます。そのように考えると、世の中にはムダな会議が多すぎるという事実が見えてきます。

3つ目のタスクは、「スケジューリング」です。著者は、予定をすべてGoogleカレンダーに記入して、メンバーが確認できるようにしていたといいます。このように、オンライン上のスケジューリングで十分、効率化ができることがわかります。また、人気のあるコミュニケーションツールである「Slack(スラック)」「Chatwork(チャットワーク)」には、そのような機能が備わっており、便利です。

本当に必要な仕事を見極める方法

今あるタスクが必要か疑問を持つべきだとわかったけれど、どうやって本当に必要な仕事を見つければいいのか? ここで、困ってしまう方がほとんどでしょう。著者は、どのような考え方に導こうとしているのでしょうか?

著者は、本当に必要な仕事は2つであると述べています

  • 自分にしかできない仕事
  • 自分がやりたい(学べる)仕事

確かに、上の2つの仕事が必要であることは理解できます。しかしながら、「毎日残業続きでとてもじゃないけど別な仕事は増やせない」と著者に反論したくなる気持ちも大変、理解できます。私も本書を初めて読んだ時に、「2つの仕事に注力していけるように、どうやって日々の仕事に向き合っていくのだろう」と疑問を感じました。

著者の主張はシンプルなものでした。要するに、「ムダな仕事を捨てる」と言っています。そして、余裕を作った後に本当に必要な仕事に集中するべきとしています。具体的な方法としては、「Todoリスト」ではなく「not Todoリスト」を作成して、無駄な仕事をどんどん省いていくことが効果的だとしています。

ただ、上司からの指示でどうしてもムダな仕事を避けられない時もあるでしょう。その時は、「はい、がんばります!」と言う代わりに、自分の頭で指示を受けた仕事について考え、納得できなければ上司であろうと意見する姿勢こそ肝心です。

Google社員はどのように生産性を高めるのか?


Googleには、ずば抜けて優秀な社員が働いています。

本書では、Google社員が「どのように生産性を高めているのか」3つの方法を述べています。

① SPRINT(スプリント)でフロー状態を生む

SPRINT(スプリント)は、Googleの仕事スタイルとしてわかりやすい例です。SPRINTは、タスクに90分集中したら15分程度の休憩をとる仕事術です。最近流行っている「ポモドーロ・テクニック」と考え方は似ていますね。Google社員は、仕事と休息のスイッチをきちんと分け、オン・オフを切り替えています。そして、「フロー状態」という極限まで高まる集中力を発揮できるように意識を整えます。当然、長時間だらだら残業で働くよりも、生産性が高いのは明らかです。

② 10倍の成果をもたらすブレイクスルー

Googleでは、「いままでの10倍の成果を出す」ことを求められるといいます。1,2割を増す方法ならそれまでの考えの延長線上で対応できるかもしれません。しかし、10倍の成果を求められれば、考えを一変させる必要があります。つまり、「ブレイクスルー」が必要です。10倍の成果を出す姿勢で働くことは、必ずしも10倍の目標には届かないかもしれませんが、無難な目標に向けて働くよりも、優れた成果を出すことができるでしょう。

③ プロトタイピングで意識をすり合わせる

「プロトタイピング」とは、試作品を作ることを意味します。プロトタイピングはよくシステム開発の時に用いられる方法です。試作品を顧客に見せ、実物の動きを早い段階で共有・確認しておくことによって、後の方になって「要件や設計」を変更が必要になる手戻りのリスクを避けることができます。

プロトタイピングは、さまざまな分野に応用できる考え方です。それと対義的な意味を持つ言葉として「完璧主義」があります。完璧主義は、日本人の思考によくあらわれます。しかし、細部まで妥協せずこだわって期限に遅れるよりも、未完成の試作品をすぐに顧客に見せ修正していく方が、ビジネスとして優れているといえるのではないでしょうか。

「アウトプット」があなたの価値を決める

時代の変化と考えるべき価値

これまでは、ただ企業に所属して言われた通り真面目に仕事をこなしていけば幸せになれるという価値観が主流でした。しかし現在では、終身雇用や年功序列といった考え方を続けることが難しくなっています。また若い世代の人たちは、仕事でお給料をもらうだけでは満足せず、承認欲求や自己実現を求めるようになってきています。著者は、このような変化も踏まえつつ、結局のところ「アウトプット」がすべてだ、と述べています。

アウトプットの質で評価されるべき

現在ではまだまだ、アウトプット(成果)よりプロセス(過程)を重視する人事がおこなわれているようです。著者は、評価はアウトプットの「質」で決めるものであると強くこのような考え方を否定しています。また、アウトプットの質が良ければ、「働き方」は自由だといいます。そのため、自宅でもカフェでも昼間でも夜中でも……好きな環境で働けます。

仕事に行き詰まったら、直感を信じることもOK

本書を読んでいると、著者の言うことはロジカルであり、論理的に物事を捉える能力が優れていることが伝わってきます。そのため、ページをめくっていて「直感を大切にすべき」という文言を見つけた時には、意外に思いました。

著者によると、「ロジカル・シンキング」は物事を説明する方法であり、新しいアイディアを出すには向いていないと述べています。また、一人で問題を抱え込むのではなく、チームに問題を共有してさまざまなアイディアをもらう方が、生産性は高いとしています。

ムダを捨てることは「幸福」へもつながる

著者は、「働き方」に関するユニークなアイディアを本書に記した後に、「幸福」を得るための5つのステップを紹介しています。本書の内容の趣旨としてはそれほど合致しませんが、著者の幸福に対する考え方を見てみるのも面白いでしょう。

  1. 自己認識
  2. 自己開示
  3. 自己表現
  4. 自己実現
  5. 自己効力

1つ目のステップは、「自己認識」です。言葉の通り、「自分についてよく知る」ことです。自分の理想を知り、人生の「軸」を持つことが、幸福への第一歩です。

2つ目のステップは、「自己開示」です。1つ目のステップ「自己認識」では、自分の理想を明らかにしました。自己開示では、自分の理想を他者に伝えて、オープンにします。

3つ目のステップは、「自己表現」です。自己表現は、幸福になるための5ステップの中でも難しい段階です。ここでは、自分の理想を叶えるために力強く自分の理想を表現していきます。

4つ目のステップは、「自己実現」です。自己実現では、自分の理想を叶えます。

5つ目のステップは、「自己効力」です。自己効力は、自身や幸福というポジティブな気持ちを得ることができます。

まとめ:ムダなモノは捨てて、がんばることをやめる

本書は、タイトルの通り「がんばらない働き方」について書かれています。そして、がんばらないようにするためには、「ムダなモノは捨てる」考え方を実践する必要があります。そのためには、「not Todoリスト」を作り、自分のタスクの中で余計なものをどんどん書き込んでいきましょう。それだけで、自分がいかに労力を無駄にしてきたか、感じることができるはずです。働き方に興味がある方は、一読されるといいかもしれません。

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