映画『イミテーション・ゲーム』に見るチームビルディング成功へのヒント

私たちが当たり前のように使っているパソコンや人口知能内蔵のタブレット、それらの進化が、生活にダイレクトに影響を及ぼす世の中になって久しいですが、そもそも、コンピュータという概念(チューリング・マシン)を生み出した人物をご存知でしょうか? この記事では、そのコンピュータの父であるイギリス人数学者=アラン・チューリングの人生を描いた映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』にみる、大きな目標達成へ導くチームビルディングへのヒントをご紹介していきます。

最近、こんなニュースを耳にしました。Amazonのスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズなどに搭載された Alexa(アレクサ)が突然笑い出すという報告が、海外で問題にあがっているというのです。(日本での報告はまだありません)
参考URL: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180308-00000048-it_nlab-sci

Alexa は、話しかけるほどにボキャブラリーが増え、便利に使えるクラウドベースの音声アシスタント。インターネットに接続してあるテレビをつけたり、音楽をかけたりと便利に使うことができます。筆者宅には、Alexaはいませんが、かわりにアップルのiPhoneやiPadにSiriがいます。いつも子供たちはSiriに話しかけ、天気を聞いたり、算数の宿題の答えを聞いたり(!)、AIとのコミュニケーション頻度は確実に増えています。子供たちには素直に良い答えを返してくれるSiriですが、同じように筆者が話しかけても、「それは面白い質問ですね」と煙にまかれたり、うまく答えを引き出せないときもあり、完全にこちらを警戒しているような様子すら感じてしまいます。人工知能への警戒感や抵抗感(?)は、大人の方が強いのでしょうか。

それはともかく、映画『イミテーション・ゲーム』の主人公、ベネディクト・カンバーバッチ演じる数学者アラン・チューリングは、既に1950年に人工知能の問題を提起するという先見性と数学的な天才的な才能を持つ人物でした。この映画でのチューリングは、暗号解読のためのチームリーダーとしての姿が描かれています。第二次世界大戦が始まった1939年、チューリングたちのチームがナチス・ドイツの暗号機エニグマの解読を成功させ、同時にイギリス連合軍が勝利するための作戦も計算し、終戦を早めたという実話を元にしています。

絶対的な確信を本物にするための行動力

エニグマの暗号を解読するために、人海戦術的に、人の手動により暗号を解こうとするのには限界があると考えたチューリング。現在で言うコンピュータを作って解読をしようと考えます。そして彼は、その考えに絶対的な確信を持っていました。絶対的な確信を持つ彼は、同僚にどう思われるかも考えず、自分の考えを決してまげずストレートな物言いをするため、悪気がなくとも同僚からは見下した態度をとっていると思われてしまいます。

チューリングは、協調性がまったくないまま、暗号解読装置の設計を進めるのですが、同僚の評判もすこぶる悪く、上司が好むような行動も取れないことから、直属の上司から装置開発のための出資を拒否されてしまいます。しかしチューリングはめげずに、彼を飛び越え、時の首相ウィンストン・チャーチルに直訴の手紙を送り、結果、予算を手にすることに成功。しかも自分をチームの責任者にすえることも成し遂げます。

このときのチューリングは、チーム力もなく、コミュニケーションもうまくいっていません。にもかかわらず、最初にクリアすべき問題である予算の入手と、リーダーになるという働きを見せます。それは、彼自身の考え方の勝利というほかありません。もし直属の上司にNOと言われたら、その彼に直訴するというのは一般的な企業では難しく、また勇気も必要な行動ですが、チューリングには、まったく迷いがありませんでした。迷いのなさの理由は、彼が自分の考えに絶対的な確信があったことに他ならず、確信を絶対に感じられるほどに、勉強し、知識と経験があったからこそ、その確信を持てることにもなったのでしょう。

柔軟性を持つ

リーダーになったとたん、チューリングはこれまでいた2名を即クビにし、新しい人材を探します。その探し方とは、新聞に難解なクロスワードパズルを載せて、解けた人にテストをさせるという斬新なものでした。結果、沢山の人材のなかから、効率よく2名の才能ある人材を採用することとなります。うち一人の女性は、キーラ・ナイトレイ演じるジョーンでした。その頃、男性と同じ職場で働くことは一般的でない時代で、女性の知性もあまり尊重されない時代でもありました。そんななか、チューリングは、ジョーンの勤務に反対する家族を納得させ、彼女を解読任務に仲間入りさせることに成功します。

ここでは、チューリングの柔軟性を見てとることができます。当時のイギリスは21歳以上のすべての女性に選挙権が与えられるようになってから11年経っていましたが、まだまだ男性と女性の仕事は完全に分かれており、女性が解読のプロジェクトに入ることも極めて異例なことでした。しかしチューリングは、女性だからと差別することもせず、ジョーンの能力や才能を評価し、彼女を仲間に入れるのです。その姿は、現在の時代の女性からみても、彼女の存在を誇らしく思える場面です。

未だに、日本の国技のスポーツは、土俵に女性を入れることに非常に抵抗があるようです。女性だからNG、男性だからOKといった考え方が未だにある風潮のなか、第二次世界大戦中という時代に、女性の仕事への理解と、女性を採用する柔軟性を持った人物がいたことに非常に感銘をうけます。ここに、チューニングのリーダーとしての人の能力を見る目と、能力を生かすためにぶれない姿勢を感じることができます。

チームメンバーを味方にする方法

チューリングが手がける解読のためのコンピュータや、解読に興味を持ったジョーン。チューリングと同僚の関係が悪いことをすかさず見抜きます。彼女は、プロジェクトを成功させるために、チューリングとチームの仲間との関係を良くしようとし、チューリングにアドバイスや行動をとらせます。結果、彼らのチームはエニグマ解読のため結束を強めることに成功します。そして、チームで協力しあい、ついに解読のためのコンピュータが完成しますが、多大なコストにもかかわらず結果を出していないようにみえるチームにいらだつ上司はチューリングをクビにしようとします。しかし、いつしかチームの結束を深めていた同僚は、総辞職をちらつかせ、クビを阻止してくれるのです。

ジョーンがチームに入るまで、関係の悪かったチームの仲間たち。ジョーンは数少ない女性のため、嫌われないための処世術を熟知していました。コミュニケーション能力の長けた彼女を味方にできたことでチューニングのチームは一変します。チューニング自身はコミュニケーションをうまくできなくとも、かわりにジェーンの機転で「チームとうまくやっていきたい」という気持ちをチームの仲間に伝えることができたことから、チームの仲間と心が通じあい、協力体制を作ることも可能にしたのです。このシーンでは、うまくコミュニケーションができなくとも、心が伝わればチームをまとめることができるという奇跡を見ることができます。

期限を決めることの重要さ

上司から、最後のチャンスとして結果を出すまで1ヶ月という期限を出されたチューリングたちは、チームメンバーと食事や酒を飲みながら話をしているうち、たまたま耳にした女性職員の会話から、エニグマ解読のための鍵に気づきます。これまで結果を出せなかった解読コンピュータ装置が、ついに暗号の解読に成功することになります。

期限が一ヶ月と追い込まれるチューリングたち。たまたま聞いた話からヒントを得て、全世界的に不可能とされてきたエニグマの解読に成功します。期限が決まってしまったとき、私たちは、期限までに目標を達成できないのではないかという絶望的に不安な気持ちに頭を抱えてしまいがちですが、何でも時間がいくらでもあるときよりも、期限があるほうが瞬発力や集中力があがり、成し遂げられることが増える傾向にあります。これは期限だけに言えることではなく、少しのルールや制約があるほうが、大きな結果を得られると言われるビジネスモデルとも一致します。自由過ぎると、かえってすべきことが見えなくなることがありえます。限られた時間のなかで、集中し、仕事の成果を手にする醍醐味を味わえるシーンです。

なお、この暗号解読に成功したものの、チームはその後大きな「犠牲」を払う決断を強いられるのですが、その悲しい決断に至る経緯はぜひ映画を確認ください。
(つまり、暗号解読までを追いかける映画ではなかったんですね)

何と言っても、俳優ベネディクト・カンバーバッチの熱演がすばらしい

終戦後、暗号解読に関わったチームメンバーは、仕事にまつわる一切を破棄するよう命令され、同時に仕事内容を口外したり、再び会うことも禁じられます。公に成し遂げたことを口外できないことの寂しさ、つらさは想像もつきません。

チームで書類を燃やすシーンがあるのですが、それはとても美しく、印象に残ります。このシーンに、チームメンバーの、仕事を口外できなくとも、成し遂げたことへの誇りや情熱、楽しさや喜び、あらゆる感情を感じます。

そして何より、この映画の一番の魅力は俳優ベネディクト・カンバーバッチでしょう。彼の、不思議なつり上がった目と長い顔から生み出される表情が、チューリングの戦後の不幸、そして死へ向かう無念さと相まって、なんとも忘れ得ない映画です。チームビルディングの観点からも、純粋に映画としても興味深いこの映画、ぜひ見てみてください。

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