チームリーダーはチームの文化をどう牽引していけばよいのだろう 連載4回め

前回はチームメンバーの観点を中心に、チームの文化をどう理解してよいチームに貢献するか、について書きました。チームの文化とは、

  • チームの存在意義 目標 目的を行動習慣として体現したもの
  • チームを構成するメンバー全員が「あるべき姿」としてもつ共通認識
  • 望ましくないことがおきた場合に取る行動と評価基準

これらの3要素に収斂されるということも申し上げましたが、これらは一朝一夕にして醸成されるものではなく、チームのあるべき姿としてリーダーが牽引していかないと、単なる烏合の衆で終わってしまいかねません。

今回は、チームの文化を作り、あるいは改善してメンバーに理解してもらうためにリーダーがどのような工夫をすればよいのか、実例を交えてご紹介したいと思います。

よいチームの行動習慣

こちらも前回のおさらいになりますが、よい文化を持つチームの行動習慣を挙げると、以下のようにポジティブさが全面に立っています。

  • トップダウンであってもボトムアップであっても、意思決定のプロセスに透明性がありメンバーが納得するまでのコストを惜しまない。
  • メンバー間のリスペクトや信頼がある
  • 失敗に対する態度やメンバーへの批判は、失敗を憎んで人を憎まず、チームでカバーする文化があり、結果論に終始しない。ダメだったらやり直せばよい、という割り切り と、やり直した結果、前回より良くなるという目標の持ち方ができる。
  • メソッドやナレッジを共有することが当たり前にできており、常に改善されている。
  • 疑問を持つことが否定されないか、または推奨されており、どうやって解決したかがチームで共有される。
  • 例外が発生したときはチーム一丸となって対処し、健全な解決を図り、再発防止策が正しく共有される。
  • マネージャーとメンバーの関係において、マネージャーはメンバーのバリューを最大化するため喜んで黒子になる。
  • チームのルールは公平な判断基準を設けるためにあり、目的が明確である。
  • チームの目標の持ち方は、メンバー全員がチームのために自身のバリューを最大化することに主眼がおかれている。

これらすべての項目で満点を取るようなチームがあれば理想ですが、現実はなかなかそうもいきません。しかし、リーダーが率先して範を垂れメンバーへの動機づけができれば、あとは自走式によい文化がチームに根付くでしょう。

チームの文化をメンバーに理解してもらうためには

チームの文化をメンバーに理解してもらう、というシチュエーションは大きく2つのパターンに分けられます。1つは、すでにチームの文化が確立されていて、新たにジョインしたメンバーがチームの文化に馴染んでもらうことを目的としています。もう1つは、これからチームの文化を良くしていこう、という目的があってチームメンバー全員にその理念を共有することを目的とするパターンです。

前者の場合は、オリエンテーションなどを通じて伝授するなど、チームの実情にあった方法をとればよいのですが、後者の場合はやや難易度が上がってしまいます。まったくのゼロからチームを作り上げる場合はともかく、マイナス要素を0からプラスに持っていく必要がある場合は、リーダー自ら示す理念や目標について、メンバーの誰よりも理解し、実行していくだけの覚悟が求められます。

私はかつて、チームがいわゆるモラルハザードに陥ったようなケースも経験しましたが、大抵においてデスマーチや経営状況の悪化など、組織の根本から変えていかないとならない、いわゆるPLクラスの手に負えないパターンですので、今回は割愛します(いずれ回を追って取り上げてみたいテーマではありますが)。

よいチーム文化を根付かせるために

よいチーム文化を根付かせるために、リーダーが心がけるべき精神は

  • 公平性
  • 透明性
  • 寛容性

であり、そのために必要な行動は

  • メソッド
  • ナレッジ
  • ドキュメント

に落とし込まれることこそが理想と考えます。その理由について、少し掘り下げてみましょう。

チームに必要な公平性とは

チームメンバー全員に対して公平であるべきなのは言うまでもありませんが、意外と忘れられがちなのが、この公平性に「条件や例外はない」という原則です。例えば「あいつは普段から○○だから」というレッテルを貼って話半分に済ませたり、逆に「あの人は凄いから無批判に受け入れよう」といったり、このような条件や例外を設けてしまうのは、チームの中での判断基準が「人依存」であり、一歩間違えば不正の温床となりかねません。

各メンバーの資質や人間性はまた別の問題です。チームの中でおきていることは等しく公平に扱われなければなりません。

チーム内の公平性を担保する透明性

チーム内の公平性は、透明性が担保します。個人的な好き嫌いや先入観は、いわゆる「人依存」の主観によって引き起こされます。また、恣意的な判断や評価、いわゆる「えこひいき」は、往々にして隠れて行われます。こうした不健全なチーム運営は、メンバーの離職や生産性の低下、モラルハザードに繋がり、メンバーの離脱やチーム崩壊の原因となってしまいます。

こうした不公平を生む土壌は、チームとしての判断基準や評価基準、チーム内のルールなどの透明性があれば、かなりの確率で防ぐことが可能です。逆にいえば、こうした透明性が担保されていないと、様々な判断の正常性が担保されず、チームの中で公平性が保たれません。

健全なチーム運営には寛容性を持つことが現実解である

凄く極端な例になってしまいますが、チームメンバー全員に対してひとしく不寛容なルールがあったとしても、それが誰彼の区別なく公平に運用され、そのルールが明文化されてチーム内においてひとしく公開されていれば、先ほどの2条件は満たされていますが、現実解としてこれでは誰もついてきません。ですので、よいチーム文化を根付かせるためには、公平性、透明性にあわせて寛容性を併せ持つことが重要なのです。

公平性、透明性、寛容性の理念を理解したところで、どうやってチーム運営に落とし込めばよいのか、もう少し掘り下げてみたいと思います。

よいチームを構築するために大切なメソッド ナレッジ ドキュメントの3要素とは

よいチーム文化に必要な公平性、透明性、寛容性と一口に言っても、その実現性や質が都度変わるようではいけません。チームにおける公平性、透明性、寛容性 これらの要素はメソッドとして確立しましょう。勿論、最初からこれらのメソッドが完成形として確立するのは困難ですが、一撃で完成させようとして手が止まるよりも、常に小さな改善を高速に回していくつもりで、積極的にメソッド化に取り組みましょう。

一度確立されたメソッドは、その瞬間からナレッジとして活用することができます。これはメソッドが確立した瞬間を切り取ったものもそうですし、その過程において得られた学びもナレッジとなるのです。ナレッジとして確立されたなら、チームの仲間へ積極的にシェアしましょう。暗黙知にしてはいけません。

もう少しナレッジについて噛み砕きますと、チームにおける設計思想やコーディングルール、品質基準など、プロダクトが求める基準やチームとして担保したい技術について、「チームとして」という観点で底上げすることをイメージすると、どのようなナレッジが必要なのかが自ずと見えてくるでしょう。こうした観点でナレッジを蓄積し、チームにシェアすることでよりストレスが少なく高い品質のアウトプットを行うことが可能にできます。

ナレッジを暗黙知にせず形式知化するために、ドキュメンテーションは必須です。また、ドキュメント化され、仲間に共有されたドキュメントはより良いメソッドが生まれた瞬間にアップデートされるべきであり、これを繰り返すことで、形式知が集合知となり、よいPDCAの循環となるのです。言わば、このサイクルはチームビルディングの仕組み化、と呼んでもよいでしょう。

チームビルディングの仕組み化がもたらす効果

チームとは、個の集合体の最小単位でありますが、これは決してスタンドプレーの集合体を意味するものではありません。共通の目的または課せられたミッションがあり、それぞれの能力や得意分野、役割に応じてタスクに分解されるのです。チームビルディングの仕組み化を行うことにより、メンバーはチームの中においてあるべき姿や方向性を最小限のコストで理解し、一定のアウトプットの質を保つことが可能になります。

また、熟練技術者やチームリーダーの個性に依存する度合いが減り、特定のメンバーに負荷が偏ることを防ぐ土台にもなり得るのです。ただし、これはすべてのタスクにおいて技術者の個性がスポイルされることを意味するのではなく、本来誰がやっても一定の品質が期待できる作業にまで熟練技術者たちの個性を求めてはならない、ということを意味しています。

熟練技術者は意識しているとしていないとにかかわらず、チーム全体を見渡すだけのスキルと余力があり、少なからず「自分はチームに貢献している」という意識があります。一方で、非熟練技術者の割合が多く、熟練技術者の個性に依存する度合いが高いチームにおける熟練技術者は、こうした「自分はチームに貢献している」に続いて「が、正当に評価されているのだろうか」「自分にばかり負荷が偏っていないか」という疑問を持つものです。

こうした熟練技術者の疑問、もっと率直に言えば疑心暗鬼はなかなか表面化することがなく、あるキッカケで不満が爆発し退職、その後エース不在のチームになってしまう危険性を孕んでいる場合もあります。また、こうした不幸は、往々にしてメソッドやナレッジのインプットが彼らの個性に依存しているために仕組み化されず、チームがチームの体をなさないままエースを使い潰してしまうという結果になってしまうのです。

一方で、非熟練技術者が1日も早くチームが求めるレベルにまでキャッチアップする必要があり、彼らのキャッチアップ速度を早めることも同時に求められています。何をするにもメソッドとナレッジとドキュメンテーションを意識することで、また、メンバー全員が主体的にこれらの改善に参加することで、自ずとよいチーム、強いチームに化ける可能性があるので、どんな小さなことであっても全員が積極的にタスクを拾っていくつもりで仕組み化のサイクルを回していきましょう。チームリーダーは是非、メンバー全員が仕組み化作りに参加できるよう、そして、それがメンバーにとってもベネフィットがあることを啓蒙しましょう。

スキルに比例したタスクの偏りを防ぎ、チームとして健全に機能するためにも、チームビルディングの仕組み化が必要である必要性が、これでおわかりいただけたかと思います。そして、これはサイクルとして回し、習慣づけられ継続してこそ意味をなすことも付け加えておきます。

まとめ

  • よいチーム文化を築き上げるために、チームの文化をメンバー全員に根付かせることが不可欠
  • よいチーム文化の根底には公平性、透明性、寛容性がある
  • よいチームを構築するためには、公平性 透明性 寛容性をメソッドとして確立し、そこから得られたナレッジをドキュメンテーション化することが必要である。これをチームビルディングの仕組み化のサイクルとして回す
  • チームビルディングの仕組み化は、チーム全体に恩恵をもたらす

間違いないチームマネジメント

競争的な市場の中でビジネスを加速させていくためには、強力なチームの存在が欠かせません。効果的なチームビルディング術や、チームでの共同作業に役立つツールやポイントを押さえることで、最高のチームを作り出しましょう。

詳細を確認する

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

同じタグのついた記事

同じカテゴリの記事