チームに溶け込むためには、会話のキャッチボールが欠かせない

前回は、既存のチームへジョインする事例から考察してみましたが、今回は日常業務での習慣づけという観点で考察してみたいと思います。
チーム内のコミュニケーションはおおよそ「リーダーや他メンバーからの指示、お願いごと」「自ら行なう報告・連絡・相談」がほとんどを占めますが、こうした日常のコミュニケーションで「会話のキャッチボール」を意識するだけで、チームの生産性や雰囲気(居心地)に差が出るものです。

開発現場における会話のキャッチボールとは

私がいくつかかかわった開発現場のチームでは、思い返すと大なり小なり「よいチーム」「ダメだったチーム」がありましたが、その差が何だったのだろうと振り返れば、メンバーのスキルやPMやPLのリーダーシップの力量に傾向があったわけではなく、「会話のキャッチボールができていたか」がチームの成否を左右していました。
よいチームで行われていた会話のキャッチボールがどのようなものか、を分析してみると、

・相手への敬意をお互いに持っている
・仕事の依頼や報告・連絡・相談には必ず期限と品質の共有が伴う習慣ができている
・何かしらのトラブルがあったとき、「誰が」ではなく「何が」いけなかったのかにフォーカスした議論を行なう

これらの傾向が多く、生産性の高さに繋がっていたように思います。
今回は、よいチームの中で行われていたコミュニケーションを「会話のキャッチボール」という観点から掘り下げてみたいと思います。

事例紹介 : 相手への敬意をお互いに持つということ

ここで述べる「相手への敬意をお互いに持つ」というのはフォーマルなお話ではなく、会話の最中は相手の方を向く、返事をする、相手の会話を遮らないということを意味します。
作業中の割り込みで話しかけられたとしても、画面を見ながら相手を見ない会話はあまり褒められたものではありません。会話でのコミュニケーションなのだから音声だけ伝わればよい、と思われるかも知れませんが、アメリカの心理学者 アルバート・メラビアン氏によると、対面コミュニケーションにおいて基本的に「言語」「声のトーン(聴覚)」「ボディランゲージ(視覚)」の3つの要素があり、メッセージに込められた意味や内容の伝達の際に占める割合は、

言語 : 7%
声のトーン : 38%
ボディランゲージ : 55%

と分析しています。

つまり、対面で相手を見ずに会話すると、93%もの情報が欠落してしまうことになってしまうのですね。
やはり、人と人との会話ですので、相手を見ずに会話するのは気持ちがよくないものですが、こうした数字に現れると非常に納得すると思いませんか?

もちろん、作業に集中しているのに毎回手を止める必要はなく、「今集中しているので後でもいいですか?」という断りを入れて構いません。
しかし、必ず相手の方を向くのは最低限の敬意でもあり、「あなたの話を聞きたくないのではなく、今集中しているのです」という非言語情報を正確に伝える目的も含んでいます。
また、すべての情報を必ず対面で音声化すればよい、というわけではなく、情報量が多い場合はメールやチャット等で先に情報を提示し、対面で「今よろしいですか?先ほどメールした件ですが~」と声をかければよいのです。

私が経験した中で、こうした対面のやり取りができているチームは、メンバー間での尊敬の念が大きく、結果として生産性も非常に高くなり、プロジェクトを離れた後も付き合いが続くほどにもなったことすらありました。

よいチームができる要因 : 仕事の依頼や報告・連絡・相談には必ず期限と品質の共有が伴う習慣ができている

先に取り上げた事例のように、よいチームでは対面でのコミュニケーションでストレスを感じることがなく、相手への尊敬の念が高い傾向にありました。また、同時に、非言語コミュニケーションへの依存度が低い傾向にあったので、思い込みによるコミュニケーションの行き違いが少なく、結果的に手戻りが少ない、生産性の高いチームとして機能していたのです。

日本語はよく「行間を読む」「品詞が曖昧な言葉の真意を汲む」「察する」という行動を無意識のうちに求められがちですが、エンジニアの中にはこうした行動が苦手という話をよく耳にします。
上司からこのような会話で仕事を依頼されることはよくあると思います。

上司「○○さん、あの仕事やっといて」
○○「はいわかりました」

この会話に出てくる「あの仕事」がルーチンワークであり、どの程度の工数でどういった成果を求められているのかが事前に共有でき、実行結果が予測できていれば、このまま着手して「終わりました」の報告で問題ないでしょう。しかし、

・イレギュラーな仕事 または前提条件によっては成果がすぐに出るかわからない仕事である
・他タスクとの優先順位づけに判断が必要である
・仕事のゴールが明確でないか、条件によってゴールが異なることが予想される

など、仕事の依頼者と自分の認識が一致していない(と予想される)場合は、どのような成果がいつまでに求められているのか、確認する必要があります。先ほどの会話を続けてシミュレーションしてみましょう。

上司「○○さん、あの仕事やっといて」
○○「わかりました。いつまでに出来ていればよいですか?」
上司「なる早でお願いしたいのだけど、いつまでに出来そう?」
○○「今仕掛中のタスクが今日いっぱいで終わりますので、明日の着手になります。恐らく~~という結果になるとは思いますが、途中経過を確認していただきたいので、2~3日後のどこかでレビューしていただけますか?」
上司「わかりました。どうもありがとう。」

いかがでしたでしょうか。この会話のやり取りでしたら、締め切り直前になって「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えることはなさそうですね。依頼された仕事の実行結果が予測できない、あるいは実行結果に予測のブレがおきそうな場合、早い段階で軌道修正する機会を作ることが大切なのです。

もし、(自分の思い込みで)完成直前に確認を求めても、ギリギリになって「スタート地点で間違っていた」となれば、プロジェクト全体のスケジュールに影響を及ぼすなど、手戻りの工数が本来の工数の数倍になることすらあり得ます。新しい仕事に着手したら早い段階で軌道修正する機会を作ることを、私は「早めに小さく間違う」と呼んでいますが、早めに小さく間違っておけば、その後のリカバリ稼働は少なく、期限内に最小限の工数で仕事を終わらせることが可能になります。
チームのメンバーになって時間が経つと、いわゆる「あうんの呼吸」が成り立つこともありますが、チームにジョインしたばかりの段階では、あうんの呼吸がすぐに成り立つとは限りません。ジョインしたばかりのチームでタスクを任されるようになったら、「早めに小さく間違う」を意識してみてください。こうすることで、大きな失敗を未然に防ぐことができるので、試してみる価値はあると言えましょう。

よいコミュニケーションへ改善する方法

私が経験した限りにおいて、という経験則で恐縮ですが、チーム内でのコミュニケーションが上手くいかず、非常に険悪な状態だった時期も経験したのですが、当時のチームリーダーが優秀な方で、いくつかの方法で改善したことがありました。その中でいくつか、効果があった方法をご紹介します。
何かしらのトラブルがあったとき、「誰が」ではなく「何が」いけなかったのかにフォーカスした議論を行なう

開発現場において、バグの発生やオペレーションミスなどは避けて通れません。また、要件定義や営業上のいわゆる戦略レベルでの失敗すらあり得ます。こうした失敗が表面化した際、最初に「誰がやったのか」という声が上がるチームは、残念ながらあまりよくないチームに多い傾向がありました。チームリーダーが字義通りに「まず誰が失敗したのかを確認して本人にヒアリングしたい」と思っていたとしても、日本語では誰かを詰問するために「誰がやったのか」という言い方をする伝統があるため、本人が萎縮してしまい、本質的な解決までのコストが跳ね上がってしまいます。

こちらはチームリーダー向けの解決手法なのですが、よい文化を持つ組織を目指すのであれば、事実確認をしたい場合、まず「何があった」のかを聞くべきであって、最初に「誰が」にフォーカスしてはいけません。

また、複数の当事者がいる場合、「別々にヒアリングを行なう」というプロセスを必ず行ってください。当事者間でお互いに言いにくいこともある場合、そこに遠慮が発生することで本当の原因を見過ごしてしまうというリスクを減らすため、これは外せないプロセスなのです。

感情よりも事実で判断する

人間は感情の動物です。ゆえに何かしらのトラブルがあったときは、大抵感情が高ぶるものですが、感情に感情をぶつけても良い結果を生むことはほとんどありません。ゆえにトラブルがおきた場合、事実で判断するのが肝要です。

とは言え、まったく感情を無視した解決というのも、メンバー間に禍根を残すことになりかねず、これもまた褒められたものではありません。

感情は冷めないうちに吐き出してもらう

こちらもチームリーダー向けの解決手法なのですが、トラブル発生時のヒアリングにおいて、当事者から話を聞くことは最初に行うプロセスです。トラブルそのものの対処は最優先ですが、当事者の感情は冷めないうちに吐き出してもらうことをおすすめします。

人間は大なり小なり認知の歪みを持つものなので、時間が経つにつれ、メンバー間のマイナスの感情で事実を捻じ曲げて報告することもあり得るからです。個別のヒアリングにおいて話したいだけ話してもらい、その間は口を挟まないようにしましょう。そして、必ず事実と感情の切り分けを行い、「誰が」ではなく「何が」原因だったのかを着地点とするのです。

会話のキャッチボールを知識化する : アサーションスキルの習得

ピラミッド型の組織や文化では、下位の者が上位者を敬う自己表現法で会話を行うのが一般的ですが、これが行き過ぎるといわゆる「ご機嫌伺い」になってしまい、下位の者の自己犠牲精神に依存してしまう危険性があります。

自己犠牲の精神が必要以上のレベルを超えると、事実よりも感情を優先してしまい、問題解決の本質から遠ざかってしまいます。自己も相手も大切にする表現方法「アサーションスキル」を習得することで、自己犠牲の精神に頼らず会話のキャッチボールで問題の本質を解決することが可能になります。

アサーションスキルとは、英語の動詞「assert」からきていますが、assertという単語は「断言する」「(力強く)主張する」「力説する」と日本語に訳されます。しかし、これは決して力技で自己主張を押し通すということではなく、お互いの考えや立場を尊重しながら主張をしっかり伝えるという考え方なのです。

アサーションスキルの詳細については、いずれ回を追って触れてみたいと思いますが、人材開発を行う企業がアサーショントレーニングを行っていたりしますので、興味がある方は調べてみることをおすすめします。こうしたコミュニケーション方法の原理原則を知ることで、お互いの考えや立場を尊重したコミュニケーションを行い、よいチーム文化が醸成されることが期待できるでしょう。

まとめ : チームにおける自らのポジション確立はお互いの尊敬と会話のキャッチボールから

新しくジョインしたチームで自らのポジションを確立するには、メンバー間でお互いに尊敬しあう関係と、会話のキャッチボールから始まります。一方通行なコミュニケーションは感情の配慮に欠け、事実の誤認識の原因にもなり得るため、お互いの立場を尊重した主張が対等にできる関係こそが、よいチームを作り上げると言えるでしょう。

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