「HRテック」の登場は企業の採用活動をどのように変えていくのか?

「HRテック」という言葉を聞いたことはありますか? 人工知能などの最新技術を駆使したHRテックを人事業務に導入することで、採用のあり方、ひいては働き方全体のあり方が大きく変わるかもしれません。具体的なHRテックのサービスを紹介する前に、まずは日本の採用制度の歴史から見ていきましょう。

HRテックによって私たちの働き方が変わる

日本の採用制度の歴史

日本では学生の期間中に就職活動を行って内定をもらい、卒業後すぐに新卒として働き始めるという、いわゆる「新卒一括採用」という形で採用を行っています。この慣行は日本では戦前から行われてきたものですが、実は世界に類を見ない日本独自の採用制度です。

この日本の採用制度に変化がもたらされたのは1960年代のことです。1962年に大学新聞広告社が『企業への招待』という名前の求人情報誌を発行しました。この冊子は企業の求人広告だけで構成されているという当時からすると画期的なもので、それ以前は縁故での紹介が中心だった求職活動を、学生の側から情報を見比べることで就職先を選ぶという現在まで続く形へと転換させました。

大学新聞広告社はその後何度か名称を変えながら現在は株式会社リクルートホールディングスとして多角的なビジネスを行なっています。また、『企業への招待』にあたるサービスは、現在ではウェブサービスの「リクナビ」として知られています。

採用制度が変わると働き方が変わる

現在主流になっているリクナビやマイナビなどの求人情報サービスを通じての一括採用には、さまざまなメリットやデメリットが指摘されていますが、一つ確実に言えるのは、テクノロジー(あるいは「仕組み」)が社会に広まることによって、採用のあり方が大きく変化するということです。

そして採用のあり方が変わると、働き方もまた変わってきます。よく指摘されていることですが、新卒一括採用の制度は、終身雇用や年功序列といった他の人事制度との関わりの中で維持されてきました。つまり、新しいテクノロジーによって採用のあり方が変わると、これらの古くから続く制度に影響が与えられて、私たちの働き方全体が変わる可能性を秘めているのです。

それでは、人事業務を支援する最新技術であるHRテックの登場は、私たちの働き方にどのような影響を与えるのでしょうか?

企業の採用活動を支援するHRテック

HRテックとは何か

HRテックとは、Human Resources Technologyの略で、人事活動を支援するテクノロジーを意味します。人事支援のためのサービスは以前から存在していましたが、近年になってビッグデータの分析やディープラーニングなどの技術を簡単に利用できるようになったため、これらの技術を活用した新しい人事サービスが数多く登場してきています。

そこで、「フィンテック(金融×テクノロジー)」や「エドテック(教育×テクノロジー)」にならい、それらの新しいサービスを指して、HRテックという言葉が使われるようになりました。HRテックがカバーする領域には、採用・育成・管理などの幅広い人事業務がありますが、ここでは、採用の領域に絞ってサービスを紹介したいと思います。

採用に関するHRテックのサービスには、大きく分けて「求人支援サービス」と「採用管理サービス」の二つの領域があります。求人支援サービスは、企業の求人情報を求職者に対して届ける支援を行い、採用管理サービスでは、選考フローの中で企業の人事担当者が抱える問題に対する支援を行います。いずれかに特化しているサービスもありますが、現在では両者が統合化されている場合が多いです。

あわせて読みたい…「業務効率化のためのアシスタントツール」はこちら

求人支援HRテック

以前は新聞や大学の学生課などで目にしていた求人広告ですが、現在はウェブ上の求人情報サービスを介して見ることが当たり前になりました。それでも、企業の求人情報を見て、そこから気に入った企業に対して応募するというプロセスは、旧来の求人広告と変わりません。

そういった中、近年、「ソーシャルリクルーティング」という新しい採用の形が登場してきています。ソーシャルリクルーティングとは、実名で登録したソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通じて人事担当者と求職者がやり取りをし、採用活動を行うというものです。サービスとしては米国発のLinkedInが世界最大の規模でソーシャルリクルーティングのプラットホームを提供しています。国内企業では、Wantedlyが「ビジネスSNS」として同様のサービスを展開しています。

この方法は、従来の採用と比べて応募者の個性を多角的に見ることができるので、入社後のミスマッチを防ぐことができると言われています。現在は中途採用市場での用途がほとんどですが、新卒採用でも活用される機会が増えれば、働き方全体に大きなインパクトがあるかもしれません。

採用管理HRテック

次に、人事担当者が採用フローの中で抱える問題を解決するためのHRテックを紹介します。採用管理HRテックのサービスは多数存在していますが、そこに共通するキーワードは、「一元化」「自動化」です。

①人事業務を一元化する
人事担当者は多くの応募者の経歴や評価、面接の日程などの情報を整理しなければなりません。また、複数の求人情報サイトで情報を発信したり、それをいくつものSNSと連携させたりと、非常に手間がかかります。さらには採用以外にも給与計算や勤怠管理など、人事担当者の仕事は多岐にわたります。

そこで、このような作業をすべて一元的に管理し、その上で、そこから得られたデータを分析し、「見える化」できるようにするサービスが登場しています。このようなサービスには、株式会社ビズリーチが運営するHRMOS(ハーモス)や、株式会社Donutsのジョブカン、株式会社ネオキャリアによるJinjerなどがあります。

②人事判断を自動化する
もう一つのキーワードに「自動化」があります。これは、上に述べたように応募者のデータや面接のスケジュールを自動的にまとめてくれるということ、そして、現在は人事担当者が行っている判断を、人工知能による判断に任せて自動化するということを意味しています。現段階では人事業務を完全に自動化するということは現実的ではありませんが、人工知能技術の急速な発展を考えると、非常に将来性のある領域だと言えるでしょう。

もっとも、現在でも人事的な判断は部分的に自動化されています。例えば、SPIなどの適性検査では、応募者の思考力や性格を機械的に分析し、それをもとに人事担当者が判断を行っているので、判断を部分的に機械にゆだねていると言えるでしょう。それでも今後は、人間が気づかないような事項の判断を自動化させる流れがさらに加速していくと思われます。

そのような先進的なサービスの一つに、Institution for a Global Society株式会社が提供しているGROW 360があります。GROW 360は、自分のパーソナリティーに関する自己評価や他己評価をスマホアプリで行ない、その結果を、選択肢を選ぶ際の指の動きまで含めて人工知能に分析させることで、自分自身でも気づいていないような潜在的な能力を見極めることができます。

HRテックは職場をより良い場所に変えるのか?

米国で採用管理HRテックサービスを提供しているGreenhosue社の創業者、ダニエル・チェイト(Daniel Chait)氏は、TechCrunch誌のインタビューで以下のように発言しています。

「例えば、電話越しでの技術的なスクリーニングを突破しても、いつも対面での面接になると落ちてしまう応募者がいるよね。対面の面接は電話よりもコストがかかる。そこで、私たちのサービスを使って、のちの採用フローで落ちてしまう応募者のパターンを特定し、彼らを初期の段階ではじくための方法を提案したいと思っている」

https://techcrunch.com/2015/03/11/i-have-people-skills/ (訳は筆者による)

このような未来は一見恐ろしいように思われるかもしれません。しかし、面接にたどり着く前に人工知能によって落とされる応募者は、たとえ落とされてなかったとしても、面接で人事担当者に落とされる可能性が非常に高いのです。人工知能によって事前に彼を落としていた場合には、人事担当者と応募者双方の時間が無駄になることが未然に防がれているので、これは双方にとって望ましい状況のはずです。

確かに、人工知能による判断によって自分の人生が左右されてしまうのには抵抗感があります。しかし、直感やフィーリングに頼った判断をしがちな人事担当者よりも、データに基づいた論理的な判断をする人工知能に任せたほうが、多くの人にとって充実した働き方が実現できるのかもしれません。

「「HRテック」は企業の採用活動をどのように変えていくのか?」についてのまとめ

日本の採用制度の歴史を概観した後で、テクノロジーによって働き方が変わる可能性があるということを指摘し、採用に関するHRテックを紹介してきました。

ここで紹介してきたHRテックのサービスは、いま現在では先進的なベンチャー企業よって採用されているものが多いですが、今後、同様のサービスが社会全体に広がっていくと考えられます。

プロジェクト管理ツール比較6選

あらゆるツールはただ漫然と使用しているだけではその効果を存分に発揮しません。
巷にあふれる無数のビジネスツールから、あなたのビジネスに合ったものを選択し、それを効果的に使うためのノウハウを知ることで、潜在能力を引き出しましょう。

詳細を確認する

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

同じタグのついた記事

同じカテゴリの記事