マネジメント
2018.06.11

高度プロフェッショナル制度 日本の将来はどうなる?

2018年7月31日に衆議院で採決された、「高度プロフェッショナル制度」を知っていますか?これは年収1075万円以上の被雇用者を労基法によって定められた労働時間や休日等の規制から外す制度です。
生産性の観点から時間あたりの成果を意識できるというメリットや長時間労働に繋がる恐れもあります。そこで今回はアメリカとイギリスの被雇用者の残業時間に関する仕組みを二つ紹介し、現在日本で行なわれている議論を整理したいと思います。

White Color Exemptionって誰の利益?アメリカの仕組み

アメリカの労働省はWhite Color Exemptionという仕事の性質を考慮して一部の被雇用者の残業時間(週40時間以上)を免除するルールを2004年に定めました。

現在の仕組み

これから先もルール改正される見込みがあるのですが、現時点では2016年の12月1日に有効となったルールが最新のものとなっており、以下のようなルールとなっています。
週の給与が最低賃金と同じか、それ以下の給与であれば、残業代が支払われなければならないというもの。
しかし下記の条件に当てはまる場合は、そのルールが適応されません。

  • サラリーマンであること
  • 経営層、役員層、もしくは職務テストにおいて定義されるプロフェッショナル職に該当すること
  • 最も賃金の安い週の最低賃金である913$(国勢調査)以上をもらっていること

現在の仕組みとなった背景

背景として以下の二点があります。

1:最低賃金への懸念
労働省内で2004年に設定された週の最低賃金455$があまりにも安いという結論になり、週の最低賃金が455$から913$となった背景があります。

2:目的との乖離
能動的に物事を決定できる経営層、プロフェッショナル層に対して、残業時間をカウントしない目的であったのにも関わらず、実際にはホワイトワーカー全体にwhite color exemptionが適応されていました。

将来の見込み

経営層、プロフェッショナル層に適応される人員の条件がより明確にされる事で、社内で適応される人は増えていくものと見られます。
経営者にとっては、被雇用者に短時間で成果を上げる意識を与える事ができるという利益があり、被雇用者にとっては残業代もなく長時間労働させられる危険性がある事です。この仕組みを悪用する雇用者と、その仕組みを悪用される被雇用者間での対立は避けられません。

残業代が支払われない?~イギリスの仕組み

仕組み

そもそも雇用者は残業代を払う必要はないとされている。それは残業代を獲得するためにわざと長時間労働をしようとするものを防ぐためだと考えられています。
しかしながら企業は残業を強制することはできないため、もし週48時間以上働かせたいなら、雇用者と被雇用者の間で合意を結ぶ必要があります。

背景

イギリスの統計局によれば1997年には被雇用者は平均2.2時間の残業代が支払われていたが、2016年までに平均1時間に落ち込みました。
この落下の背景としては、2008年以降の経済危機にも関わらず、柔軟な労働市場が大幅な失業率を防いだことがあります。つまり失業率は上がらなかったが、その分個人の給与は減ったということです。

将来の見込み

労働経済学者のボブハート氏は「金融危機以来インフレにほとんど追いつかない状況で基本賃金の引き下げより、残業代の削減の方が被雇用者の反感を買わないと判断しており、BREXITもあったイギリスの経済状況が良くならない限り、残業代が正当に支払われる事はなさそうです。

高度プロフェッショナル制度に関する国内での議論

日本では2005~07年に「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」が検討されました。こちらは一定の要件(職種・職務や賃金水準)を満たすホワイトカラー労働者を労働時間規制の適用除外(exempt)とするものでした。しかし世論の反対を受けて、実現しませんでした。2018年現在では「高度プロフェッショナル制度」という形で提案されています。今回は議論の中で賛成派と反対派の意見が出ていますが、意見の前提となっている考えを整理しながら、それぞれの意見を説明したいと思います、

賛成意見

賛成派の大前提として、働き方改革の枠組みの中で「賃金は成果に対して支払われるべき」という考えがあります。
そのため、この制度によって時間を意識して成果を出すインセンティブができるので、賛成という結論になっています。確かに残業代がなくなることによって、時間対効果を被雇用者が意識するのは間違い無いですね。誰も自分のプライベートな時間をけずってまで、働きたくないですからね。

反対意見

反対の大前提としては、この仕組みによる被雇用者の労働環境の悪化に対する懸念があります。つまり残業代を支払いたくない雇用者が被雇用者に残業代を支給しないために悪用されるという事です。年収要件にしても、「年収を1075万円に設定し、契約上、働かなければならない時間を6264時間{(365日ー休日104日)×24時間}にする」という方法で年収を357万円まで下げることが可能ということで、対象年収や対象業種を拡大されることに危機感を感じている方もいるようです。
実際に一人の社員に1075万払える会社がどれだけあるかを考えてみると、対象年収が徐々に下がってくるというのは十分考えられますね。

最後に

みなさんいかがでしたか。プロフェッショナル層に残業代が支払われない仕組みができつつあるアメリカと不景気の反動から残業代を支払わなくなったイギリスの例と日本での「高度プロフェッショナル制度」の議論を見てきました。おそらく日本はアメリカのケースを見習って、これからルールを具体的に定めていくんでしょうね。他人事だとは思わず、アメリカのWhite color Exemptionにも注意を払ってはいかがでしょうか。

リンク

White Color Exemptionに関する最新のルール

FinancialTimesによるイギリスにおいて残業代が払われない背景

イギリス政府による残業に対する声明

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度の議論に欠けている視点

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