FinTech業界研究~通貨の形を変えるテクノロジー~

近年、頻繁に耳にするようになった「仮想通貨」や「暗号資産」といった言葉。「X Tech」の中でもFinTechは爆発的な発展を遂げています。今回はテクノロジーが通貨のかたちを変えてきた過程にフォーカスします。

「20代のための注目業界図鑑 -シゴトのコトゴト-」第4回のテーマは、FinTech業界について。日々使う通貨の姿をあらためて見つめてみたいと思います。

Advertisement

1. FinTechとは

FinはFinance(金融)、TechはTechnology(技術)、FinTechとは金融に情報技術を結びつけることで生まれるサービスを指します。XTechの中で特に大きな発展を見せているにも関わらず、「つかみどころがない」といわれるのは言葉の範囲が広すぎることが原因です。

たとえば、送金・決済・融資・投資・仮想通貨などは、すべてFinTechのビジネス領域に含まれます。領域が広いということは、人によってFinTechという言葉を聞いて思い浮かべるイメージやサービスが異なり、企業が注力するポイントも分散するということです。

この記事ではそのようなFinTechにおいて、特に身近なサービスについて考えていきたいと思います。

1.1 生活の中に根づくFinTech

私たちの身近にあるFinTechサービスとは、一言でいえば「お金」に関わるものです。それらは人々が知らず知らずのうちに触れ、生活になじんでいます。具体的には、日々の生活のなかで現金を使う機会が減ってきていることを私たちは実感しているはずです。

現金を使わずに買い物ができることは、少し前から当たり前のことになっていますが、決済方法が今のように多様化したのはいつからだったのでしょうか。「お金」がさまざまなかたちで認識され、使用される社会になったのはFinTechの発展のたまものだといえるでしょう。

1.2 FinTech業界の市場規模

2019年9月18日、株式会社矢野経済研究所が「FinTech系ベンチャー企業の国内市場規模推移予測」を公開しました。その中でFinTech系ベンチャー企業の市場規模は、3年後に1兆円を越えるという予測が示されました。

2018年度の実績が2000億円規模だったことから考えると、非常に成長性のある業界であることがわかります。

FinTech系ベンチャー企業の国内市場規模推移予測の表

<出典>https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2232

1.3 FinTechサービスを取り巻く企業

一般社団法人Fintech協会によると、同協会への所属企業数は合計378社にのぼります。内訳は法人会員が260人、ベンチャー会員が118人です。法人会員の中には、金融関係の企業だけでなく、さまざまな業界の大手企業の名前が並びます。

また、ベンチャー会員の一覧ページでは、数々のスタートアップ企業のロゴを見ることができます。大小問わず多くの企業が所属している状況から、FinTechサービスがいかに多様な要素・サービスを巻き込み、広がっているのかがうかがえるでしょう。

2. 通貨の形を変えるFinTech

記事冒頭でも触れましたが、このようなFinTechの広まりは「お金」の姿を変えるというかたちで私たちの生活に浸透しています。「現金を使わず買い物をする方法」という点で考えただけでも、いろいろなイメージが浮かびます。

クレジットカード・ICカード・電子マネー・スマホ決済、そしてビットコインをはじめとする仮想通貨。これまでに生まれた新しいお金のかたちは、気づいたときにはいつの間にか社会になじんできました。

2.1 FinTechはどのように浸透していくのか

一方で、海外に比べると日本はまだまだ現金が重視される社会だといわれます。事実、日本の商取引における電子決済比率が現在18%である一方で、アメリカでは45%、イギリスでは55%というデータ(P.6)があります。

日本で電子決済が浸透しないのは、さまざまな決済方法の乱立が要因です。というのも、各国の消費者が持つキャッシュレス決済で利用できるカードには、それぞれに偏りがあるためです。

たとえばアメリカでは人々が持つカードの約8割がクレジットカードですが、イギリスはデビットカードが約7割、シンガポールでは電子マネー用カードが6割強といった具合です。

ところが日本の場合はクレジットカード・デビットカード・電子マネー用カードが全体をほぼ三等分していて、人々に所持されています。これにより、店舗側は複数の決済方法に対応することが求められ、消費者は店舗ごとで使用するカードを使い分けなくてはなりません。

その結果、現金で支払うのが最もラクという状態が生まれ、日本ではキャッシュレス化が遅れているという見方があります。今後電子決済サービスが革新され、だれもが使う選択肢が生まれたときにこそ、お金に関わるFinTechサービスは一気に浸透することでしょう。

2.2 FinTechが生んだ新たな通貨

キャッシュレスとは別の流れとして、新しい通貨の動向にも注目が集まっています。先日大阪で開催されたG20に先駆けておこなわれた「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」では、仮想通貨についての声明がまとめられました。

<出典> https://cripcy.jp/news/g20s-statements-on-crypto-assets

声明のなかでは「仮想通貨」は通貨ではなく、「暗号資産」だと結論づけられました。英語でCryptoCurrency(cryptoは暗号、currencyは通貨の意)と表記されるこの言葉は、「暗号資産」を、流通できても常に同じ条件で扱えるものではないということを示唆しています。

つまりは価値が流動的であるため、既存通貨と同等には扱いにくいということ、また、扱う際には注意が必要であるという意味です。声明のなかでは、具体的な注意点として次の4点が必要だと呼びかけられました。

①金融システムの安定②マネーロンダリング対策③利用者保護④分散型技術

上記の注意点をみると、仮想通貨あるいは暗号資産と呼ばれるものが、まだまだ信用性の低い存在だと感じられます。FinTechによって生まれた新しい「お金」が社会に受け入れられるのには、もう少し時間がかかりそうです。

2.3 ビジネスとしてのFinTech

新しい通貨の浸透にもう少し時間を要するとはいえ、FinTechの領域は「仮想通貨/暗号資産」だけではありません。各種サービスで活用されるFinTechはビジネス領域としても多岐にわたります。

<仮想通貨/暗号資産以外のFinTechビジネス領域>

出典:
https://mastand.com/money/work/best-fintech-japan/
  • スマートペイメント
  • 資産運用
  • クラウドファンディング
  • ソーシャルレンディング
  • 融資
  • 送金
  • 保険
  • 金融情報 など

上記はB to C・B to Bのいずれかに限らず、さまざまな顧客群を対象に含むことができるサービスばかりです。今後、それぞれのビジネス領域が成長していけば、社会におけるFinTechの存在感は確実に大きくなっていくでしょう。

3. FinTech業界で働くことについて

FinTechサービスに関わる仕事は、大きく分けて二極化しています。ひとつは銀行をはじめとする大手金融機関がFinTechを研究する動き、もうひとつはIT系のベンチャー企業が新たなサービスを開発する動きです。

FinTech業界で働くにはベースとなる金融の知識・経験を習得してから活躍する道と、IT業界に飛び込み、フレッシュな状態でFinTechサービスの開発に携わるという2つのルートがあります。

3.1 FinTech業界で働くために必要な知識

「ビジネスとしてのFinTech」の項目で説明したように、FinTechサービスがさまざまな領域にまたがる分、仕事において幅広い知識を活かすことができます。

まず、コアな部分としては、金融もしくはIT系の知識を習得することが有効です。金融系の知識はFinTechのベースになるものであり、IT系の知識は既存金融サービスを革新するために欠かせない要素だからです。

また、FinTechが実現するのは本来対面で提供されるサービスを、非対面にすることでもあります。そのように考えるとサービス業やシステムのオペレーション関わる知識も、活かせる場面があるでしょう。

金融系からアプローチするのか、IT系からアプローチするのか、もしくはそれ以外の側面からアプローチするのか。FinTechに活かせる知識に制限はないといえるかもしれません。

3.2 FinTech業界で活躍する人材像

幅広い分野にまたがるFinTechサービスに携わり、活躍するためには、ひとつの専門分野に特化することが重要なポイントです。というのも、業界内の人たちから「FinTechという言葉は広すぎる」といわれるものをすべて網羅することは不可能といえるからです。

まずは専門性のある知識を身につけながら経験を積み、自分の得意分野を作っていくことを目指しましょう。独自性を持っている人こそが、サービス企画・開発において重宝されるはずです。

3.3 FinTech業界での待遇

金融系の企業で、FinTechに関わる職種の募集は一般的にオープンになっていません。そういったポジションの募集はハイキャリアの経験者を対象とするものが多く、紹介会社が取り扱っている場合がほとんどです。

年収の設定は500万円前後のものもありますが、上限が1000万円以上に設定されているも多く、高いスキルや豊富な経験を持つ人へのニーズがうかがえます。

一方で、金融業界未経験者を対象とするFinTech関連の求人募集はIT系が中心です。SE系の募集が多く、職種未経験であれば年収300万円前後、経験者であれば600万円以上と、こちらにも大きな差があります。

このような待遇差からも、FinTech業界で働く際に、専門性の高いスキルを習得する重要性が感じられるでしょう。

FinTech業界で活躍し、報酬を増やしていくためには、さまざまな領域の業務を表面的になぞるのではなく、ひとつの業務を深く突き詰めて経験を積む意識を持つことが大切です。

まとめ

日々の生活に欠かせない、しかしながらその動きが見えにくい「お金」に関わる領域を、テクノロジーによって進化させるFinTech。幅広い領域にまたがる分、すべてを網羅しにくいというのは、一見難しく見えます。

しかし、全容が見えにくいなら、無理にすべてを把握する必要はなく、専門特化して1つひとつの知識を深めていけばいいのです。そして、一度知識やスキルを身につければ、それらは業界全体から求められるものになります。

自分が興味の持てる部分の知識を習得しながら、これから大きく成長していく業界で経験を積んでいくことは、将来的に自分のキャリアにとって大きな財産となることでしょう。

最新情報をチェックしよう!
Advertisement
>TeamHackで、タスク管理を驚くほどラクに。

TeamHackで、タスク管理を驚くほどラクに。

TeamHackは、タスク管理とチャットが同時にできる「業務コミュニケーションのしやすさ」に特化したオンラインワークスペースです。コミュニケーションツールとタスク管理ツールを行ったり来たりして、二重に管理の手間がかかる問題をスッキリ解決します。

CTR IMG