事例紹介
2018.10.10

個人税理士事務所で電子化を進めると業務が効率化するとは限らないワケ

遠方の会社とのやり取りが多かったり、リモートワークを行なったり、という場合、大量の資料をデータでやり取りし、そのうえで電話やメール、チャットなどで意思疎通をする必要があります。

しかし、1つの事務所で、地域のクライアントとからの依頼が中心となっている場合、そこに「必ずしも電子化しなければならない」という切羽詰まった理由はありません。

今回は私が話を聞いた、所員10人規模の個人税理士事務所に勤めていたAさんの話を例に出し、電子化の必然性やチャットツールの利用について考えてみましょう。

個人税理士事務所の場合

事務所の様子

よくいる「おじいちゃん先生」が長年自宅の3階で開いている税理士事務所です。税理士は「おじいちゃん先生」1人で、他にアシスタントとして10人ほどの所員が勤めています。私が話を聞いたAさんは、商業高校で簿記の勉強をした後民間企業で事務員をした後転職し、20代前半に5年ほど在籍していたとのことです。

Aさんの前年に入所したという30代の所員がひとり居たほかは、20年~30年同じ事務所で勤めている人ばかり。クライアントも「昔からこの先生に頼んでいる」「親の代からお願いしている」というような地元企業のクライアントばかりで、狭い地域だからこそ噂話になりかねないため守秘義務は厳守。

顔が見える範囲内に全員が居るため、メールやチャットでのやりとりは皆無で、情報共有はすべて紙ベース。特徴的なのは、先生が真っ白なA4用紙に手書きで書いた情報メモを所員がWordやExcelなどでデータに起こしていたことです。

顧客情報のみ、システム上(よく会計関係者が使う「弥生会計」や「ミロク情報サービス」「勘定奉行」など)で管理していたそうですが、そのほかは紙と口頭による情報伝達のため、紙に残っているか確認するか、記憶を頼りにするかしか情報を振り返る手段はありません。

情報の保存については、クライアント毎に分けられたA4バインダーにすべて閉じ、すぐ使うものは事務所内の本棚、保存期限が決まっているもののほぼ使わない、という資料は事務所裏の倉庫にしまっていました。

毎月に処理するクライアント数は10数件~繁忙期は100件以上ですが、基本的には定時で帰宅でき、繁忙期でも21時には上がれる、という比較的ホワイトな労働条件だったそうです。

ごくまれに発生する「言った言わない」論争

日々の作業はアシスタントたちが去年の分を見ながら新しい分を作成し、ベテラン所員に確認。修正があれば修正を行い、先生に判子をお願いする、という流れでした。

基本的にわからないことは何でも質問するように言われており、聞きにくいことは無かったといいます。ただ、事務所内では何十年も変わらず仕事をいただいているクライアントについては「いつものことだからわかっているでしょ」という雰囲気が所内全体で漂うため、過去の資料などを見て予習後質問する、という形で業務を進めていたそうです。

業務の性質的に、制度の変更などで提出書類や書式の変更があったり、手続き内容が変わったりということもたまにあるのですが、その情報伝達も口頭か紙。10人も人が居ると誰に話して誰に話していないかわからなくなるもので、ごくまれに「言った言わない」論争に発展していたようです。

このような事務所で電子化はできるのか


現在は転職し、リモートワーカーをしているAさん。チャットツールでクライアントとやり取りし、電子データで納品を行うことも多いため、参考までに「(前に勤めていた税理士事務所で)電子化をしたら便利になると思うか」と尋ねたところ、次のようなメリットとデメリットを上げてくれました。

メリット
・クライアントとチャットツールでつながることができれば、不足資料をもらえるため、いちいち事務所に足を運んでもらう手間を省略できる
・タスク管理ツールやカレンダーツールを導入することで、会社ごとに変わる締め日を管理できればわかりやすくなる。決算書の締め日や給料の締め日など、一つの企業で複数の締め日が存在するので紙ベースだと管理しにくい。
・書類を電子化することで、提出も簡易になるものが一部ある。
・チャットログに記録が残るので「言った言わない」論争を軽減できる可能性がある。
・新しく所員が入った場合に情報共有が簡易になる可能性がある

デメリット
・所員が50代中心で、確定申告書などもすべて手書きで処理してきた世代。慣れれば「便利だね」となりそうではあるが、キャッチアップにどれだけかかるかわからない。
・所員たちが現状で不便を感じていない。
・電子化すべき資料が膨大であり、そこにどれだけのコストがかかるか見当がつかない。

パッと見るとメリットの方が多そうに見えますが、まず所員がキャッチアップするだけのリソースが無ければ導入は難しいでしょう。また、開業時からの数十年分の資料を一気に電子化する労力も必要となります。

このような場合、業務の効率化、という観点だけで見ると電子化をしたほうが良いように見えますが、先生の年齢も考え、先生が電子化に対応できるかどうかまで考えねばなりません。また、事務所がこの後何年継続するかまで検討したうえで、実費や人的なものも含んだ費用対効果を考えると必ずしも電子化すべき、とは言いきれないでしょう。

ただし、これはこの事務所が地元企業に頼りにされる、地域密着型の事務所であり、十分に利益を出しているということも関係してきます。クライアントが遠方の場合や、これからさらに新規クライアントを開拓していきたい場合、特に若いクライアントを増やしていきたい場合などは電子化し、「イマドキの企業」に対応できるようにしておくに越したことはありません。
また、ひとつの事務所で、少人数で仕事をしており、コミュニケーションもスムーズに取れている、というのも注目すべき点のひとつです。

  • 所員同士のコミュニケーションがスムーズ
  • 所員の入れ替わりがそれほど激しくない(定着率が高い)
  • 紙ベースの資料が、しっかりとしたルールの元整理されている

という状態で、所員ひとりひとりの中にしっかりとナレッジがため込まれています。ひとり急な休職や退職してしまうと一定の影響がある可能性もありますが、それもしっかりとした資料の管理がされているのであれば大きな問題とはならないと考えられます。

まとめ

いかがでしたか? ある程度の条件が整っている場合、必ずしも電子化したほうが良い、とは言い切れないのではないでしょうか。

ただし、これがもっと人数が多い事務所で情報共有が煩雑だったり、事務所を複数個所構えていたりする場合や、クライアントが地元企業にとどまらない場合、事情は大きく変わってきます。また、所員同士のコミュニケーションに不安がある場合、チャットツールを使用することで情報の伝達不足などのもめごとを回避できる可能性は大いにあります。

これらは税理士事務所に限った話ではなく、紙ベースで仕事を行っている事務職であれば多くの業種に適用できる話かと思います。「電子化、興味はあるんだけど…」という場合は、今一度どういう作業を電子化すると何が便利になるか、ということを洗い出してみてはいかがでしょうか。

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