PMPと現場の乖離を埋める! 課題を抱える開発現場にPMBOKを導入したお話

システム開発チームが日々立ち向かっているプロジェクトに、同じものはありませんよね。同じプロジェクト管理のやり方でうまくいくのが理想的ですが、そうではないことはみなさんも痛感していると思います。PMP資格をご存知でしょうか。PMP資格は、PMI (プロジェクトマネジメント協会)が認定している、プロジェクトマネジメントに関する国際資格です。円滑なプロジェクト推進を目指すために、プロジェクト管理に関する体系だった知識を習得します。プロジェクトマネージャーやITコンサルタントなどが取得することが多く、私もこの資格をもっています。

今回は、私がPMP資格の知識を活用してプロジェクト管理に取り組んだ際に感じた現場とのギャップと、それをどのように克服してきたかご紹介します。

1.私がPMP資格を取得した経緯

私は、2013年にPMP資格を取得しました。きっかけとなったのは、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)支援として、プロジェクトに参加したことです。

勤めていた会社が関わっている保守開発案件で、度々障害やリリース遅延が起こっていたため、支援するために参加しました。

そのとき開発現場は、次のような状況でした。

  • 開発ルームと呼ばれる部屋に、複数の開発ベンダーが混在
  • ベンダーをまたいだプロジェクト管理は行われていない
  • タスクに期日はあるが、ガントチャートはない
  • 稼働サービスの運用に関する定期作業は手順化されていない
  • 機能追加のたびに作る基本設計レベルの指示書はあったが、システムの最新の状態が記載されている設計書はない
  • 情報が属人化している

こうした状況に危機感をもった私は、プロジェクト管理全般にメスを入れることにしました。とはいえ、プロジェクトに参加してすぐの人間に、開発チームのメンバーが耳を傾けてくれるはずがありません。そのため、メンバーを説得するための整理された知識が必要でした。

そこで注目したのが、PMBOKガイド(A Guide to Project Management Body of Knowledge)です。

PMBOKガイドには、プロジェクトマネジメント業務に関する体系だった知識が載っています。また、PMP資格の試験では、PMBOKガイドから問題が出題されます。PMP資格を取得すればメンバーへの説得力が増し、開発現場での改善活動がスムーズになると考え、資格取得を決めました。

2.教科書どおりではうまくいかない! 現場とのギャップを振り返る

PMBOKガイドにはたくさんのノウハウが詰まっていますが、開発現場に活用することは簡単ではありませんでした。

計画、設計をはじめ、プロジェクト管理の基本はドキュメンテーションです。

前述のとおり、開発現場には資料作りに意欲的なエンジニアはいません。せっせと資料を作ってチームメンバーに情報共有した人は、ファーストリリースのタイミングで開発現場から抜けていました。開発現場には、チームメンバーとの情報共有を好まず、「情報を属人化したい」エンジニアだけが残っていました。

情報を属人化したいと考えているエンジニアは、どの現場にもいます。彼らは「自分しかもっていない情報を作ること」が、自分の評価を高めると考えています。

私は最初に、PMBOKガイドから簡単に着手できそうなことをいくつかピックアップして、試そうと考えました。

【試そうとしたこと】

  • ロードマップを作り、マイルストーンを設定する
  • タスクを分解してガントチャートを作る
  • 変更要件や合意内容を管理するためのルールを作る
  • 稼働サービスの運用に関する定期作業の手順書を作る
  • 振り返りをしてみる

これらは、プロジェクト管理を本格的に導入するための前振りのつもりでした。ところが、少し作業したところですぐに、まったく予想していなかった問題を現場が抱えていることに気づきました。PMBOKガイドを実践しようと行動に起こすほど、次々と現場とのギャップにつまずいたのです。

【現場の反応】

  • ロードマップやマイルストーンという単語を初めて聞いた
  • タスクは与えられるもの。自分でタスクを細かくしたことがない
  • 課題管理表などを用意しても、ルールを元に継続的な記入ができない
  • 運用に関する作業手順を知っていることが自分の価値である。他メンバーに教えたくない
  • 振り返りをしようにも計画がない

何よりも私が頭を抱えた課題は、現場がこのような状況に問題意識をもっていないことでした。PMBOKガイドには、プロジェクト管理の優れたノウハウやテクニックが詰まっています。しかしこれらのノウハウを使いこなすには、プロジェクト推進にあたっての豊富な知識や多くの経験が必要なのだと、このとき初めて気づくことができました。

3.PMBOKガイドの使いどころを見定めてギャップを克服する


当時の私はPMBOKガイドに沿って進めようと躍起になっていました。しかし現場との乖離に直面し、「PMBOKのとおりにいかないなあ」とイライラしていました。

そこで一度、PMBOKガイドから距離をおくことにしました。PMP資格試験のために、プロジェクト管理に関する学習を進めていくうちに理解した「考え方」をベースとして、コミュニケーションを取ることから始めました。

まずは開発チームに、プロジェクトの状況に対して問題意識をもってもらうことが大事だと考えました。エンジニア一人ひとりにヒアリングしながら、プロジェクトにどのような課題があるのかをあらためて収集すると同時に、収集した情報を整理してメンバーに広めました。作成したドキュメントはファイル管理を徹底し、開発チーム全員が容易に閲覧できるように保管しました。

開発チームに問題意識が芽生えると、メンバーからからたくさんの意見が出るようになりました。それに比例して、メンバー同士の衝突が起こるようになりました。機能実装中に手戻りが発生した場合も、これまでは他責にして悪気なく遅延させていただけでしたが、スケジュールに影響が出ない方法を模索したり、手戻りの発生を問題視したりするようになりました。

メンバー同士が衝突すると、コミュニケーションが悪くなったと感じる人もいるでしょう。しかし、本当は逆なのです。正しく運営されているプロジェクトだからこそ、メンバー同士の衝突や認識齟齬が起こります。

ですから私は、このような兆候が出てきたことを歓迎しました。そのとき私は「PMBOKガイドを実践できる土壌が出来上がった」と感じました。PMBOKガイドのプロジェクトマネジメント業務に関する体系だった知識を活用した改革に、あらためて着手することにしました。プロジェクト管理を、本格的に導入するための前振りのつもりで試そうとしていたことも問題なく進み、プロジェクトは次のように改善しました。

  • 計画内容が明確になり、細かなスケジュールが作られるようになった
  • 計画が作られるようになったので、振り返りができるようになった
  • 運用に関する作業手順も作られたことで専属の運用担当者は不要になり、開発チーム全員が持ち回りで担当できるようになった

4.まとめ

PMP資格は、プロジェクト管理に関する専門性のあるスキルを保有している証明として有効です。しかし、試験の出題範囲の体系知識を学ぶだけでは、十分ではないことを実感しました。

PMP資格を取得したら、学んだテクニックを実践したいと思ってしまうものです。しかしそうではなく、まずはプロジェクト管理に関する考え方を広めたり、プロジェクトが抱えている課題をチームで共有したりするところからはじめてみることが、改善の近道のようです。

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