「クリエイティブ思考」を身につけるヒントを『FUTURE INTELLIGENCE』から学ぼう

私たちの住む世界はどんどん複雑になっています。それを推し進めているのはテクノロジーの発展です。その中でもインターネットの登場と進化によって、人々は世界中の膨大な情報にアクセスすることが可能になりました。これによって世界の解像度はあがったでしょうか? その答えは「NO」です。むしろ情報の氾濫によってさまざまな要素が絡み合い新たな問題が次々と浮上、その解決に国家や企業などの処理が追いつかなくなっています。

このような21世紀における複雑性に対処するためには、既存のアプローチはほとんど役に立ちません。

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新たな視点で物事を捉える能力、「クリエイティブ思考」が注目される

一般的にクリエイティブ思考は、作家やミュージシャン、芸術家などに必要な能力だと考えられがちですが、これからの時代においては万人が身につけるべき素養になる可能性があります。もちろんビジネスの世界においても同じことがいえます。世の中のさまざまな問題を解決したり、新たな価値を生み出すためには、従来のパラダイムをシフトさせるイノベーションが不可欠です。そして、イノベーションを生み出すためにはクリエイティブ思考が求められるというわけです。

クリエイティブ思考は、後から身につけることができない持って生まれた才能のようなイメージをお持ちの方も多いと思います。確かに、それを否定することはできません。しかし、クリエイティブ思考を後天的に磨いていくことが不可能なわけではありません。では、どうしたらクリエイティブ思考を身につけることができるのか?それに応えるヒントが今回取り上げる『FUTURE INTELLIGENCE ~これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』(スコット・バリー・カウフマン、キャロリン・グレゴワール 著 / 大和書房 刊)には記されています。

「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣

本書では、「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣を次のように示しています。

  1. 「遊び」ー楽しいことで脳を刺激する
  2. 「情熱」ー何かに夢中になる
  3. 「夢想」ー自分と深くつながる
  4. 「孤独」ーひとりの時間で考える
  5. 「直感」ー無意識の声を聞く
  6. 「好奇心」ー非日常の体験で限界を広げる
  7. 「瞑想」ー観察し、点と点をつなげる
  8. 「繊細」ー傷つきながら、深く感動する
  9. 「逆境」ー辛い体験で限界を広げる
  10. 「異端」ーアウトサイダーでいる

世の中には「クリエイティブ思考」の重要性を説きながらも、それを手に入れる方法について説明しているこのは決して多くありません。それはどうしてか理由を考えてみました。本書の内容を踏まえると、大きく分けて3つの理由があります。

  1. 「クリエイティブ思考」を正確に測ることが難しい
  2. 「クリエイティブ思考」の身につけ方を論理だけで説明できない
  3. 「クリエイティブ思考」は多くのパラドックスを内包する

一つずつみていきましょう。まず一つ目の理由ですが、私たちが学校などで受けるテストの大半は分析力をはかるテストです。それらのテストは、学力や知能レベルを知るためには有効な手段ですが、「クリエイティブ思考」を測定することは難しいといえます。「クリエイティブ思考」を測る方法としては、洞察力テストと呼ばれる手法がありますが、一般的ではないためまだまだ確実性に欠けています。要するに、「クリエイティブ思考」の測定値がないのでそれを向上させる方法の議論もおこなわれずらいということです。

次に2つ目の理由です。これは上に挙げた10の習慣のほぼすべてが論理的に明確に捉えがたい曖昧な概念であるということです。例えば、「瞑想」について考えてみましょう。もし瞑想に関する書籍などを読んだことがあるならわかると思いますが、瞑想の習熟度やそれを手にする過程を論理的あるいは科学的に説明することはほとんど不可能です。いまの世の中の傾向は、ロジカルなことを高く評価します。それゆえに、それでは理解することができない「曖昧なもの」については重要度が低いと考えられがちだといえます。すると、習得法も広まっていかないのは当然でしょう。

最後に3つ目の理由は、本書のあとがきで著者も言及していますが、「クリエイティブ思考」には互いに矛盾することが共存しています。具体的には、あとで少し説明しますが「マインドフルネスとマインドワンダリング」「オープンさと繊細さ」「孤独と協力」「遊びと真剣さ」「直感と思慮」のような相反する概念がどちらも必要だと解説されています。それが、「クリエイティブ思考」を理解する難しさにつながっています。

次の章では、3つ目の理由について掘り下げて考えてみましょう。

「クリエイティブ思考」を理解する上で、キーとなること

「クリエイティブ思考」の理解に重要なことは本書の次の文に集約されています。

クリエイティブ思考の人の独自性を一言でいえば、それは「複雑性」だ。

「ポップス界の王」と呼ばれたマイケル・ジャクソンの煌びやかなパフォーマンスだけを見れば、彼がステージの外では非常に繊細な内面を抱えていたことを知ることはできないでしょう。さらに、マイケルの伝記を書いたJ・ランディ・タラボレッリは、マイケルの人格に見られる多くの矛盾に一本の筋を通すことを諦め、こう書きました。

「マイケルについて語り、彼を分析しようとするのは、電気を分析するようなものだと思う。どちらも確かに存在しているが、どうやって動いているのかは見当もつかない」

ここでわかることは、「クリエイティブ思考」の多面性、それからそのような思考を持った人々の中には多くの場合、二極性があるということです。研究によれば、「躁」と「鬱」という対極の要素によって苦しめられる精神疾患「双極性障害」を抱える人々には、「クリエイティブ思考」を持つ人が多いようです。世界的ロックバンド「ニルヴァーナ」のフロントマンだったカート・コバーンもこの病気に苦しめられていました。

前章で述べた「マインドフルネス」「マインドワンダリング」について少し解説をします。「マインドフルネス」は現在、世界中でブームとなっていることの一つで、「いまこの時に心を集中させ、ありのままを感受する」ことを指します。それに対して「マインドワンダリング」は、「関心が外から内に向かい空想にふける」ことです。両者は相反する概念ですが筆者によれば、創造的な仕事で成功を収めた人々は「マインドフルネス」と「マインドワンダリング」を巧みに行き来するといいます。

要するに、「クリエイティブ思考」について考えるときは、論理性を度外視しなくてはならないということです。これは少し勇気がいる考え方だと思います。なぜなら、合理的に説明できることであれば「努力」と「結果」の関係性が見えやすいので、自分の貴重な資源を投入する気になる一方、論理性を無視した努力は徒労に終わるのではないかという恐怖と闘わなければならないからです。しかし著者は、曖昧なものをそのまま受け入れる度量の大きさが「クリエイティブ思考」を身につけるために大事なことであると強調しています。

「クリエイティブ思考」を身につけるには世間の常識にとらわれてはならない

「クリエイティブ思考」を身につける上では、世の中の多数派の考えに囚われない柔軟さが大切になります。これまで述べてきたように、「クリエイティブ思考」は世間が好む科学的な考え方に固執していては、習得できません。まず10の習慣のうちの一つである「異端」は、「クリエイティブ思考」によって現状に挑戦し、努力する過程においてしばしば抵抗と逆境に遭遇すると示しています。一見すると、「世間の人々は、クリエイティブなアイディアに好意的ではないか?」と考えるかもしれません。しかし、多くの場合それはすでに支持を得た後の評価であるといえます。基本的に、人間は異質なものを不快と感じるるようにできています。

世間の常識にとらわれないことが、「クリエイティブ思考」を身につける上でどれだけ大事なことか、10の習慣を一つひとつ簡単に見ていきましょう。

遊ぶ時間を大切にする

第一の習慣である「遊び」ですが、最近の調査によると、遊ぶことの多い大人はストレスを感じにくく、ストレスをうまく扱い、人生により満足し、より多方面で成功を手にしていると示されています。また、クリエイティブな仕事には真剣な時間ももちろん必要ですが、遊びの時間をそれに組み合わせることによって最善の結果を出すことができるといいます。仕事に「遊び」を持ち込むというと、特に日本社会では反感を招きそうですよね。

外的な要因で仕事をすると成長できない

心理学者のロバート・ガードナーらは「情熱」を調和的なものと脅迫的なものに分類しました。前者は内的な要因により創作に向かい成長が重視され、後者は外的な要因により創作に向かい成長しにくい、といいます。世の中には、「十分なお金を得たい」「他人から評価されたい」という気持ちで働いている人が多く、その考え方は多数派でしょう。しかし、そのような人たちは「クリエイティブ思考」を身につけることが難しいようです。

夢想することは無駄ではない

一般的な親や教師は、子どもがただ空想にふけってばかりいては、あまり良い印象を抱かないでしょう。しかし、このような時間はムダではなく「クリエイティブ思考」を身につける上で大切な行為だと著者は述べています。

創造は孤独な内省を必要とする

現在は人々の「つながり」が大切に思われている時代です。それに反して、一人孤独に過ごしていると「社会不適合者」というレッテルを貼られかねません。しかし、「クリエイティブ思考」には孤独な時間が不可欠であると筆者は主張しています。

クリエイティブ思考の人は、革新的なアイディアをひねり出すためにひとりきりの環境を必要とし、そのアイディアを一つの概念や製品にまとめる段階では共同作業する

このように、内向性と外向性のバランスをとることが大切な資質であるようです。

直感は思考形態の一つ

「直感」は、ビジネスの世界などでは非常に軽視されがちです。しかし多くの研究が、「直感」を導き出す元となる無意識が、新しいアイディアを思いつくために重要な役割を果たすと示しています。ただこれも「直感を信用すべき時」と「しっかり考えるべき時」をはっきり区別することが大事だとしています。

好奇心が強い人ほどクリエイティブ

「好奇心」は10の習慣の中では、世間的に支持されやすいものだと思います。ただ、好奇心の有無は知能指数の高低よりはるかに仕事の質に影響するという説は、意外に思う方も多いのではないでしょうか。

支持されつつある瞑想

「瞑想」というとスピリチュアルな響きがあり、直感的に敬遠してしまう方も多いはずです。しかし、Appleのスティーブ・ジョブズがこれに真剣に取り組んでいたように、瞑想の効果は肯定的に評価されつつあります。

繊細さは必ずしもマイナスではない

どんな分野でも、真の創造性の持ち主は、並はずれて敏感に生まれついた人だ

ストレス社会である日本の社会では「繊細さ」はウィークポイントであるという認識が一般的です。しかし、繊細であることは外部からの刺激に敏感であることを意味しており、脳が処理している情報が多いということです。「クリエイティブ思考」を点と点をつなぐことと捉えれば、繊細な人はその点が多いだけ有利と考えることができます。

ピンチはチャンス

「逆境」は多くの場合、失敗と結びつけられます。そして「失敗」は悪いことであるという見方が世間では根強いでしょう。が、多くの映画にあるような「逆境をバネに成長して、偉業を成し遂げる」というストーリーは、実際に起こり得ます。

アイディアの「質」は「量の産物」である

「異端」は、すなわち世間に受け入れられないということです。それでも、「異端」であること恐れていては「クリエイティブ思考」を決して育ちません。真の革新をなすには、最終的に社会から受け入れられるかどうかの保証なしに、数多くの可能性を試さなくてはなりません。

まとめ:クリエイティブ思考

この記事を読んだ方ならわかるように「クリエイティブ思考」は簡単に身につくものではありません。しかし、大人になってからも身につけることは十分可能です。そのためには、世間の考え方と背くものをたくさん受け入れなくてはなりませんが、試して見る価値は十分あるでしょう。気になった方は本書を一読してみてはいかがでしょうか。

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