『仮想通貨3.0』約480億円相当のビットコインが消失。Mt.GOX(マウントゴックス)事件当時のCEOが語る真実とは?

2014年2月、ビットコイン取引所であるMt.GOX(マウントゴックス)は約480億円相当のビットコイン(約75万BTC)をハッキングにより盗まれました。今回の連載で取り上げる『仮想通貨3.0(マルク・カルプレス 著、講談社 刊))』の著者は、当時のCEO。さまざまな噂が飛び交う事件の中心人物が自らの言葉で、当時を振り返る貴重な書籍です。仮想通貨の基本的な知識も丁寧に解説してあるので、誰が読んでも楽しめるでしょう。

『仮想通貨3.0』の要約

  • 仮想通貨とブロックチェーンの仕組みを初心者向けに優しく解説
  • Mt.GOX事件の舞台裏を当時のCEO自らの言葉で語る
  • 仮想通貨の将来の見通しについて、楽観的か悲観的か

『仮想通貨3.0』はこんな人におすすめ

  • 仮想通貨の知識がゼロで基本的な仕組みを理解したい人
  • 大規模ハッキングMt.GOX事件の中心人物が語る真実に興味がある人
  • これから仮想通貨がどうなっていくか、じっくり考えたい人

仮想通貨とブロックチェーンの基本


では、まず「仮想通貨」あるいは「ブロックチェーン」について少し基本的なことをおさらいしておきましょう。

Satoshi Nakamoto が掲げた理念(ヴィジョン)

もっとも有名な仮想通貨であるビットコインは、Satoshi Nakamoto(サトシ・ナカモト)という謎の人物が、2008年10月に「ビットコイン:P2P電子マネーシステム」という論文をインターネットに公開したことにより誕生しました。Satoshiが論文の中で掲げた理念とは、暗号技術を利用することにより、中間管理者(政府機関や金融機関)を介することなく、個人間のP2P(Peer-to-Peer)の取引(トランザクション)を可能にすることです。すると、中央管理者に支払う手数料や複雑な手続きを踏む必要がなくなり、個人に恩恵をもたらすことができます。

P2P(Peer-to-Peer)ネットワーク

P2Pネットワークとは、複数の参加者のコンピューター同士を網の目のようにつなぎ、同じ情報を分散して共有する方法です。

一般的に、取引の記録は機関(エンティティー)の中央サーバーに保存されます。そのため、中央サーバーがダウンすると、たちまち取引に影響が出てしまいます。

これに対して、P2P(Peer-to-Peer)ネットワークは、世界中の1台1台のPCやサーバー(ノードという)に取引の記録がすべて公開、共有されています。現在その数は、1万を超えるといいます。すると、もし複数のノードがダウンしたとしても、他のノードが取引を承認すれば良いので、取引に影響が出ることはありません。

本書によると、数分の間におよそ1000~2000の送金リクエスト(未承認)がリストされるといいます。

マイニング(採掘)

マイニング(採掘)は、ブロックチェーンを理解する上で、とても重要です。まず、マイナー(採掘者)という人たちが、P2Pネットワークにより集まった未承認の送金リクエストをブロックと呼ばれるデータ領域に入れていきます。ちなみに、ブロックに収納できる取引の数はおよそ2000件です。

ブロックの準備が整ったら、いよいよマイニング(採掘)のスタートです。マイニングを細かく説明すると話が長くなるので、簡単に説明します。

まずマイニングとは、計算競争です。計算の結果、正解を見つけると報酬でビットコインがもらえます。しかし、計算の方法は「総当たり」しかありません。つまり、次々と数値を入れて計算していき、たまたま正解に行き当たるしかないのです。そのため、マイニングには膨大な計算とそれに必要な電力が必要です。

このように熾烈な計算競争によって、P2Pネットワークのセキュリティを担保する仕組みのことをPoW(Proof-of-Work)と呼びます。

Mt.GOX(マウントゴックス)事件の舞台裏


多くの人にとって、まだ記憶に残っているMt.GOX事件。その金額の大きさも含め世界中に大きな衝撃を与えたこの時間ですが、それはそもそもどのような事件だったのでしょう。当事者が語る言葉を整理してみます。

Mt.GOX事件はどのようにして起こったのか?

Mt.GOX事件とは、著者が運営していたビットコイン取引所Mt.GOXが、480億円相当のビットコインをハッキングにより盗まれ、民事再生法の適用の申請をするに至ったできごとです。その後、Mt.GOXのCEOであった著者は、資金の横領をおこなったとして逮捕されました。

ここではMt.GOXが生まれてから、著者が判決を言い渡されるまでの流れを年表で整理しましょう。

2011年3月著者が知り合いからマウントゴックスの事業を引き継ぐ
2011年4月タイム誌でビットコイン特集が組まれる
2011年8月株式会社MTGOX(マウントゴックス)を設立
2012年4月正式にビットコイン取引所事業を開始する
2013年3月キプロスの金融危機(富豪たちが資産をビットコインに移す)
2013年9月FRBのバーナンキ議長がビットコインに肯定的な姿勢をみせる
2014年2月Mt.GOXはハッキングにより480億円相当のビットコインを盗まれる
2015年8月著者が口座不正操作の疑いにより逮捕される
2017年7月東京地裁で初公判が開かれる
2018年12月検察側が著者に懲役10年を求刑する
2019年3月著者に懲役2年6ヶ月の執行猶予4年の判決

著者は資金を横領したのか?

2019年3月の判決によると、私電磁的記録不正作出・同共用罪に対して懲役2年6ヶ月の執行猶予4年と有罪を言い渡されました。しかし、業務上横領罪および特別背任罪に関しては、無罪とされています。どういうことかというと、著者が不正により個人的な利益を得ようとしたわけではないと証明されます。検察側は、Mt.GOXに3億1,500万円と2,000万円の不正な送金があったと主張していましたが、どちらも合法におこなわれていたという主張が認めれた形です。つまり、著者はMt.GOXのセキュリティの脆弱さに関しての責任は問われますが、資金を横領したわけではないということです。

Mt.GOX事件はビットコインの脆弱性を示したのか?

Mt.GOX事件のようにハッキングによりビットコインが盗まれると、ビットコインの安全性について疑問視する声が必ず上がります。しかし、2019年6月現在に至るまで、ビットコインのブロックチェーンへの攻撃が成功したことはありません。Mt.GOX事件も取引所のセキュリティーのオペレーションに不備があったことが原因で、ビットコインが盗まれています。つまり、取引所のハッキングはビットコインの脆弱性を示すものではありません。Satoshi Nakamotoがビットコインの論文を出してから10年を超える月日が経過していますが、ビットコインのブロックチェーンの堅牢さは変わらないままです。

仮想通貨とブロックチェーンの将来

本書の後半では、仮想通貨とブロックチェーンの将来について言及されています。

著者は、「DApps(ダップス/Decentralized Application)」というブロックチェーンを利用したアプリケーション(特にゲーム)については、肯定的な見解を述べています。一方、業界の今後については、厳しい見通しをしています。論点を3つにまとめます。

通貨として利用されることは難しい

通貨には3つの役割があるとされています。

  1. 価値の尺度
  2. 価値貯蔵手段
  3. 決済手段

ビットコインは、1つ目の「価値の尺度」と2つ目の「価値貯蔵手段」の役割は、十分あるでしょう。しかし、3つ目の決済手段としての役割を担えるかについては、議論が分かれるところです。

著者を含む懐疑派の主張のうち、もっとも重要な点が価格変動性が大きすぎるということです。つまり、決済の手段として使うにはあまりにも値動きが大きく、日常利用に耐えないのではないかという主張です。また、税金の問題もあります。ビットコインの利益で決済をした場合、差額は雑所得として確定申告しなくてはなりません。買い物をするたびに、確定申告のための記録を残さなければならないことは、現実的に決済手段として成立しないと頷けます。

膨大な電力消費は持続可能性がない

ビットコインのマイニングには、超高速マシンの計算処理のために、膨大な電力を消費します。大手会計事務所PwCの分析官が運営する経済情報サイトでは、2019年5月5日時点でのビットコインの年間電力消費量を約60TWhと試算しています。これは、スイスの年間電力消費量に肉薄します。要するに、ビットコインのマイニングは、国家に匹敵する大量の二酸化炭素を排出し、地球温暖化に深刻な影響を与える可能性があります。

ブロックチェーンの中央集権化

ビットコインのマイニングは70%近くが中国でおこなわれており、一部の企業が寡占しています。セキュリティーを支えるマイナーに偏りがあることは、ビットコインの脆弱性につながります。
また、ビットコインの当初の理念は、政府や銀行、企業などの中央集権組織に依存せず、個人間で取引をおこなうものでした。しかし現在は、世界中の銀行や企業がブロックチェーンの研究を進めており、当初の目的とはかけはなれている実情があります。

筆者による考察

まず、筆者はこの本が出版されたことに驚きました。著者のマルク・カルプレスは、仮想通貨の世界からはすでにはじき出されていると考えていたからです。Mt.GOX事件に関しては、さまざまな人たちが事実関係を調べ、発信しています。ただ、カルプレス本人の視点から、Mt.GOX事件についてここまで詳細に語られるとは思いもしませんでした。そのため、とても興味深く拝読しました。

正直なところ、書籍としての完成度は高いとはいえないと思います。どこまで本人が執筆に携わったかもわかりません。しかし、やはり当事者の口から出る言葉には価値があると思います。著者は、仮想通貨の将来についてはやや悲観的な見方をしています。その考えは、きっと事実でしょう。仮想通貨とブロックチェーンが今後どのように、発展・普及していくかはわかりませんが、著者の意見も頭に入れつつ注視すると良いでしょう。

まとめ

第4回目となる連載では、『仮想通貨3.0(マルク・カルプレス 著、講談社 刊)』を取り上げました。仮想通貨やブロックチェーンのことをまったく知らない初心者からMt.GOX事件の真相を詳しく知りたい上級者まで、楽しめる書籍だったのではないでしょうか。今回の連載をきっかけに、仮想通貨やブロックチェーンに興味を持つ人もいるかもしれません。面白い分野ですので、ぜひ調べてみると良いですね。

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