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2019.03.31

人(ヒト)が活き活きと働けるように、『入門 組織開発』を読んでみよう

「組織開発って何だろう?」と、書店で手に取った『入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる』(中村和彦 著/光文社 刊)。一読してみて、組織開発の全体像を知りたい人には素晴らしい本だと思います。きちんと学術的な議論もされており、主張の根拠も信頼できます。「もっと詳しく内容を知りたい方」は、本記事を参考にしてみてください。

社員の「人間的価値」を尊重する組織へ

 

私たちが、「組織」と聞いて思い浮かべるモノはさまざまでしょう。例えば、役所や企業、病院や学校、ボランティア団体、などです。次に、これらの組織に共通することを考えてみます。そうすると、どの組織にも「目的・意図」があり、それに基づいた「活動」をしていることがわかります。ただし一人きりでは、組織とはいえないでしょう。そのため組織は「ある目的や意図をもち活動する人々の集まり」と定義することができます。

『入門 組織開発』(以下、本書)によると、「組織」は、2つの側面があると主張しています。

1つ目は、「ハード」な側面です。ハードな側面とは、組織の中で形式化・明文化されたものをいいます。
具体的には、組織構造や制度・規則、職務内容などがあります。

2つ目は、「ソフト」な側面です。ソフトな側面とは、人に関するさまざまなものを指します。
具体的には、信頼性・協働性やコミュニケーション、モチベーションなどがあります。

私(以下、筆者)が、「組織開発」と聞いてすぐに考えたことは、組織の「ハード」な側面でした。例えば、どのような組織を作り上げれば、より収益が上がりコストを削減できるのか、などについて。しかし、著者(以下、中村さん)が述べる「組織開発」はまったくニュアンスが違いました。

中村さんは本書の中で、こう述べています。

組織のハードな側面だけではなく、ソフトな側面に働きかけ、その変革に取り組むアプローチが組織開発です。

要するに、「組織開発」が対象としているのは、「人(ヒト)」であるということです。

しかし、日本では組織における人(ヒト)の扱いは、百点満点とは程遠い現状にあるといえるでしょう。

日本の組織における4つの問題点

「組織開発」について本格的に話を始める前に、日本の組織の現状を考えてみましょう。中村さんによると、現在の日本の組織は4つの問題点を抱えているといいます。筆者も、過去複数の日本企業で働いた経験があるので、ここで述べられている内容には共感できることが多々ありました。それでは、1つ1つ問題をみていきましょう。

① 社員が活き活きと仕事できない

みなさんは、日本の社員が活き活きと仕事をしていると思いますか?「そう思う!」という人もゼロではないと思いますが、ほとんどの人は否定的な反応を示すのではないかと思います。事実、本書の例によると、欧米と比べて日本の青年(18歳から24歳)は、職場生活に満足している人が少ないというデータが示してあります。

心理学によると、仕事のヤル気すなわちモチベーションは2つあるといいます。1つは、「外発的動機づけ」です。外発的動機づけでは、給料や昇進などの外から与えられるものがモチベーションに影響することをいいます。一方、2つ目の「内発的動機づけ」では、やりがいや忠誠心、達成感など自分の内にあるものがモチベーションの源泉となります。

中村さんは、社員の「主体性」は内発的動機づけによって生まれることが多いと述べています。確かに、納得して仕事をする方が嫌々に仕事をするよりも、前向きになるのは明らかでしょう。とはいえ中村さんが、すべての外発的動機づけを否定しているわけではないので、誤解がないようにしてください。

② 利益偏重主義

筆者は、企業が利益を求めることを否定しません。なぜなら利益は、「企業が市場(マーケット)の欲求(ニーズ)を満たす製品やサービスを提供することによる対価」だからです。しかし、企業が「利益のみ」を追求するのであれば、話しは少し変わってきます。多くの場合、利益のみを求める企業は、その中で働く人(ヒト)を軽視するからです。

中村さんは、トップダウン的に数値目標だけが上司から部下へと伝達され、ストーリー(前後の文脈)が抜け落ちてしまっていると指摘しています。また、人間は感情や意思を持ち、機械のように扱われてはならないとも述べています。「利益偏重主義」に陥ることは、短期的な成果が出るかもしれませんが、中・長期的に会社の大きな資産となる人(ヒト)を失うことは、企業にとって致命傷です。

③ 個業化する仕事のやり方

a. ITの普及による個業化

ご存知の通り、インターネットの普及と発展によって「パソコンの前に座り、1人で仕事をする」というスタイルは、定着してきています。一緒のオフィスで働いていても、メールでやり取りする。これは、珍しいことではありません。

b. 個業化する会議

職場の会議に良い印象を持っている方は少ないでしょう。一方的に上司が目標や数値を示すだけ、あるいは、他の同僚の成果報告を聞いてるだけ。このようにムダな会議が多いため最近では、会議を改革する書籍なども売れています。

中村氏は、会議に全面的に反対していません。彼は、会議やMTGという対面の場でしか行えないものが3つあると本書の中で述べています。

  1. 創造的思考
  2. チーム学習
  3. 将来のビジョンや目標の合意

いずれも、お互いが意見を交わせる「双方向のコミュニケーション」であることが重要です。

c. 個業化しないメリット
中村氏は、仕事が「個業化」することに警鐘を鳴らしています。
仕事を個業化しないメリットとして、次のように述べています。

仕事が個業化しておらず、複数のメンバーがともに業務に携わったり、情報がメンバー間で共有されたりしている関係性がある職場は、部下同士の間でもコミュニケーションが起きやすく、お互いに仕事の相談をし、技術的または心理的なサポートをし合い、補完し合ったり助け合ったりということが起こります。

④ 多様性への対応

本書は、日本企業が抱える問題として「多様性への対応」をあげています。多様性(ダイバーシティー)とは、「性別や国籍」「人種や宗教」「信条や言語」など、異なる属性が合わさったことをいいます。

ご想像の通り、現在における日本の職場のほとんどは「多様性」がありません。しかし今後、さまざまな属性を持つ人材が日本企業で働くことは増えていくでしょう。ただ、日本人同士であっても、「世代間の格差」をはじめ多くの問題が生じていることもあり、多様性への対応は日本にとってハードルの高い目標かもしれません。

「組織開発」とは?

「組織開発」の定義

今まで「組織開発」という言葉を繰り返し使いました。そろそろ、「組織開発とは何なのか?」ということについて考えていきましょう。

本書によれば、組織開発(Organization Development)はアメリカで1950年代終盤に生まれ、欧米を中心に発展してきたアプローチです。海外では略称として「OD」と呼ばれることが多く、本書でもODという言葉がたびたび登場します。

組織開発について知るためには、

  • コンテント(WHAT)
  • プロセス(HOW)

という2つの用語を理解しましょう。
ここでは「仕事」を例に「コンテント」と「プロセス」を考えます。

仕事における「コンテント」は、WHAT(何が)?と問うことでわかります。そうすると、コンテントは仕事の「内容や課題」だとわかります。これに対して、仕事における「プロセス」は、HOW(どのように)?と問うことでわかります。プロゼスは、仕事における「人間関係性」を意味します。

まとめると、本書による組織開発の「定義」は、「組織のプロセスに気づき、よくしていく取り組み」であるといえます。

「組織開発」の価値観

a. 根底にある4つの価値観

組織開発の研究者であるロバート・マーシャク氏によると、組織開発の根底にある価値観として、次の4つがあるようです。

  1. 人間尊重(ヒューマニスティック)の価値観
  2. 民主的(デモクラティック)な価値観
  3. クライアント(当事者)中心の価値観
  4. 社会的・エコロジカル的システム志向性

1つ目の「人間尊重の価値観」は、性善説を基にした理論です。適切な環境が与えられれば自律的かつ主体的に仕事に取り組むだろう、という考えです。2つ目の「民主的な価値観」は、可能な限り多くの関係者から意見を集めることで、ベストな結果を出すことができる、という考え方です。

3つ目の「クライアント中心の価値観」は、企業が当事者意識を持って組織改革に取り組む必要性をいっています。4つ目の「社会的・エコロジカル的システム指向性」は、組織内だけではなく外にある社会や環境にも関心を持つべきといっています。

b. チェンジ・エージェントとユース・オブ・セルフ

本書では、組織開発に取り組む心構えとなる2つの言葉、

  • チェンジ・エージェント
  • ユース・オブ・セルフ

を紹介します。

「チェンジ・エージェント」とは、組織開発の実践者のことを指します。チェンジ・エージェントは、組織内におけるプロセスに気づき働きかけることで、組織を開発していく責任があります。

「ユース・オブ・セルフ」に込められた意は、組織の変革に自らの気づきや価値観をどんどん使っていくべき、ということです。しかし、我流の押し付けにならないように適切なコミュニケーションをしていく必要があります。

まとめ:組織開発の教科書

本書は、「組織開発」の教科書のようです。概念・価値などの抽象的な話題から具体的なノウハウ・方法論まで包括的に「組織開発」を理解するには、うってつけです。

近年は、「人(ヒト)」にスポットライトをあてている書籍も多くなってきました。ただ現状では、なかなか変革が進んでいる様子はありません。

私(筆者)は本書のような内容がもっと、広く読まれていくことにより、見えない変化が起こるはずだと期待している者の一人です。

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