事例紹介
2018.02.16

国産CMSとして強固なファンたちを築き上げたa-blog cmsのこだわりは

CMSという言葉を始めて使うようになったのは、2000年を過ぎてからのことかと記憶しています。
CMSとは、Contents Management Systemの略で、日本語では「コンテンツ管理システム」。 いわゆる、管理画面からテキストや画像を入力できHTMLを編集することなくWebサイト(ホームページ)が更新できるシステムを言います。
山本さんは、a-blog cmsを提供する有限会社アップルップルの代表取締役で、このCMSの生みの親でいらっしゃいます。
「私より長い間CMSをやっている人はいないでしょうね」とさらっと言葉にされましたが、強固なファンを持つ国産CMSの開発について、またその経緯を含めお話を伺いました。

山本さん プロフィール:

有限会社アップルップル 代表取締役社長
まだ世の中にインターネットが無かった時代にSIerで7年間プログラマとして働いたのち、インターネットが一般に広まり始める頃からプロバイダに5年勤務。その後、2002年に独立しWeb制作の仕事を始め、2000年には日記用のCGIを世にリリース。これが、CMS開発の端緒となり、以来16年間CMSを作り続けています。CMS開発以外にも、名古屋の「WCAN」という名古屋のWeb制作者のためのセミナーの主催や、コワーキングスペース「ベースキャンプ名古屋」の運営も。
車が大好き!

https://www.appleple.com
https://www.a-blogcms.jp

a-blog cms〜 Web上でサイトを更新する仕組みを作り続けてはや20数年

大井田:

国産CMSとして多くのユーザーを抱えられていること。また、サービスを持続している強さということを御社のサービスからいつも感じていまして、今日はそのあたりの秘密も伺えたらと思ってきました。

山本:

はい、何かお役に立てることがお話できればよいのですが

大井田:

まずは、a-blogというサービスのこれまでの経緯をお聞かせください

山本:

実はよく勘違いされていることがありまして、a-blogというサービスとa-blog cmsというサービスはまったく別のものなんですね。2004年から2009年まで、CMSのシェアNo.1が WordPressではなく、 Movable Typeのころにa-blogという製品を開発し、私がプログラムを書いていました。a-blog cmsというのは、名前は継承していますが、a-blogのコードは1行も使われていません。「Web上で簡単にサイトを更新できる」という機能を特化して、開発当時からオリジナルなことにこだわって開発をアップデートしてきています。

大井田:

その、サイトを更新するための開発ということはなにがきっかけだったのですか?

山本:

もともと私はCOBOLのプログラマーでした。あるSIerに新卒入社しエンジニアになりました。その当時はインターネットはありません。その後、プロバイダーがたくさん誕生し、あるプロバイダーに転職し、5年程度勤めました。まさにそのころから、Webサイトの更新を簡単にするためのプログラムを書き始めたのです。

a-blogという名称の前には、a-nikkiやa-Newsというプログラムがありました。そもそも「ブログ」というものがなかった時代から作っていますからね、当時のネットサービスはネットに「日記」を書くという伝え方から私の考えるサービスを認識していただくという感じだったと思います。
ちなみに、それらのプログラムはPerlのCGIです。
※ a-nikkiの初公開は、2000年の10月28日

大井田:

それが、a-blog cmsになっていくのは?

山本:

ちょうどいまのWordPressがまさに同様の使われ方をしていると思うのですが、ブログのためのソフトウェアだけど、ブログ以外のこともやれるようにしたいという要求が強くなったからですね。制作者が作りやすいもの、そして、利用者が使いやすいシステムするべく、何度も作り直して現在のシステムになりました。

ところで、2018年はこのWordPressもMovable TypeもUIが大きく変わると予想されています。ご存知ですか?

大井田:

それは知りませんでした。なにが起こっているのでしょう?

山本:

「書く」ことに特化したサービスがいくつか人気を呼んでいます。国内ではnote、海外のものだとmediumというサービスがあります。これらに特徴的なのが、いわゆるWYSIWYGではなく、真っ白な画面に自分の好きなように書いていけるUIデザイン。WordPressは、Gutenberg(グーテンベルグ)という新エディターが用意されているそうです。

「ブロックタイプCMS」と呼ばれますが、要素という単位でブロックを画面に置いて、そのブロックごとに文字を入力、あるいは画像を貼り付けるなどというスタイルに変わるんですよ。実は、この方法はa-blogの前のa-Newsの頃から早々に実現していたので、その点では時代が追いついてきたかなんて思っています。

a-blog cms 開発のスタイルとは

大井田:

では、開発のスタイルについてのお話をお願いします

山本:

だいそれた開発体制があるわけじゃないので、恐れ多いのですが、現在はエンジニアが2人で開発しています。そのマネージを私が行なっているという体制ですね。a-blog cmsもすでに8年経ってまして、当初はエンジニア一人で開発していました。最初のエンジニアは既にいなくなってて、現体制は3代目エンジニアです。

彼が一通りやりつつ、フロントエンドをメインにやるエンジニアがいる。また、弊社はCMSを作るだけじゃなくて、受託の制作もやっているので、それをすることもあります。
テーマの開発なども自社内でやっていますから、デザイナーも携わっているので、社員全員がこのプロジェクトメンバーですね。

大井田:

プロジェクト管理という視点で語ると、どのようになりますか?

山本:

CMSのことについてはCTOに任せて、自由にやってもらっています。

大井田:

ツールはなにをお使いですか?

山本:

JIRAを使っています。バージョン管理ではBitbucketを使っています。かつてはBacklogを使っていた時期もあったのですが、現在では、受託もすべてJIRAを使っています。

大井田:

JIRAを使い始めたきっかけはどのようなものですか?

山本:

そうですね、GitHubからBitbucketに移行したタイミングで、BitbucketをやっているAtlassianがJIRAというツールもやっているというところからでした。

大井田:

なるほど。あくまでBitbucketとの連携をさせるということが前提だったと

山本:

そうですね。そのあたり一連のことをきちんとやろうとすると、非常に整っている環境だと思いました。

少しお話がずれるのかもしれませんが、ツールということでいま一番困っているのは、時間管理です。どれだけの時間でそのタスクをしているのかという計測をするサービスがあるじゃないですか。そういったものを積極的に使っていきたいと思っているのですが、当社は開発をしながら受託もやっているので、急に電話がかかってきて、そのサポートをしなければならなくなることも多々あります。

結局、時間管理をしていても、すぐに別の作業に移ってしまい、設定を切り替えて時間を記録することが非常に難しい。そこを何とかしたいと思っています。

大井田:

なるほど。タイムトラッキングのツールには何をお使いになりましたか?

山本:

TimeCrowd、Togglの2つを使おうとしていました。

大井田:

続かない、ということがタイムトラッキングの一番の問題ですからね。マルチタスク作業ということも、他社でも悩まれていると伺いますよ

オープンソースに取り組み始めたのが、最近の大きな転換

大井田:

プロジェクト管理で工夫されていること、御社独自のやり方は何かありますか?

山本:

a-blog cmsはオープンソースではなく、クローズド・ソフトウェアです。世の中の流れからみても、少しずつオープンソースを考えていかなければならないので、最近ではJavaScript系のライブラリなどをオープンソースで作るように転換をしました。

CMSで使うものを、まずはオープンソースのライブラリとして世の中に公開するわけです。初めはCMSで使ったものをオープンソースで公開しようというつもりでした。が、だんだん逆転してきて、いまでは「こういうものが欲しいよね」と意見が出たら、まずオープンソースで外部でも使えるライブラリを作っています。それをCMSに取り込んでいく。世の中に出して、世の中にもんでもらっていい感じになってから、うちの中に戻すというような開発フロー体制ですね。

それと、基本的にPHPでクローズなのですが、JavaScriptについてはオープンソースにしています。GitHubのランキングをベンチマークしています。

いま現在、JavaScriptではGitHubのスター数が昨年末に、名古屋で1位、日本で27位になりました。a-table.jsというプログラムはテーブルのHTMLを書くためのライブラリですが、Movable Type 7 Developer Previewにも採用されました。

大井田:

すばらしいですね!

山本:

誰もが使うものではありませんから、星の数は少ないのですが。

a-blog cmsという製品がオープンソースになることはないと思うのですが、できるだけ、出せるものは出していく、と。現在は暗号化されて見えない部分も多いのですが、いま現在は既に半分くらいのソースコードは公開している状態になっています。徐々に公開を進める方向に動いていますね。

ユーザーコミュニティを大事にしたい

大井田:

a-blog cmsには多くのファンがいますよね。ユーザーとのコミュニケーションと開発の仕組みで、何か工夫されていることはありますか? 例えば、ユーザーからの声を吸い上げて、開発に活かすといったような

山本:

毎年5月と11月に日本中からユーザーを集めたイベントを行なっています。そのイベントに合わせて、完成していなくても何か見せられるものを用意して、そこでいろいろな人からの声を聞くことで、それを実装しています。うちは制作会社でもあるので、うちの社内でほしいものはみんなも欲しいのではないかと考えています。うちはシステムだけを作っている会社ではないので、実際に我々が使っている武器を皆さまにもお渡ししているという感じです。

ついでに、一言。昨年の11月のイベントで、年末から年始までには次期バージョンをリリースすると伝えたのですが、結局まだできていないのが目下の悩みです。2月中にはリリースすると決めましたので、ここできちんと発表しておきます。

大井田:

オンライン上のコミュニティの運用は、現状は行なっていないということでしょうか?

山本:

有償でサポートしているパートナーさんたちだけのFacebookグループがありますが、そこに参加している人はほとんどイベントにもいらしている人になります。イベントは平日に行なっているので、仕事で本当に使っていただいている人たちに来ていただいていると思います。

大井田:

全国あちこちで使われていると思うのですが、特にここのエリアで強い、といった地域はありますか?

山本:

日本全国、いろいろなところで勉強会をやっていて、その後、勉強会を行なった地域で利用者が増えてくる状況ではあります。東京・大阪・名古屋で多く使われていますが、他には北九州や、香川、福井なども多く使われています。

展望

大井田:

次期バージョンのリリースが2月とのことですが、a-blog cmsがこれからどうなっていくのか、さらにこれからの開発上の取組みについてお聞きできればと思います

山本:

次のバージョンは外部APIとの連携の機能をしっかりと作っていきたいです。システムの中だけで全部やろうとしても難しい部分が出てくますからね。

お問い合わせフォームから、Google スプレッドシートへの書き出しがオリジナルのデザインを加えた状態でできるようにしたりとか。さらにCRMとの連携、メルマガのシステムとの連携などを考えています。

内部的には、より使いやすいテンプレートエンジンを加えていきます。新しいものができたとしても、古い書き方をサポートして、より効率的にできるようにするということを考えています。あとは、MTのように静的書き出しを実装します。

毎回新しいバージョンを出すたびに、これだけあればもう何もいらないだろうと思いながらも、やっぱりリリースされると次にやらないといけないことが出てきますね。

大井田:

プロジェクト管理というものを、ソース管理、タスク管理、コミュニケーション(メッセージング)と分解すると、メッセージングには何を使っていますか? Slack一択ですか?

山本:

社内ではそうですね。ですが、クライアントとのやり取りでSlackを使うことはまだまだ難しいです。場合によっては外部と一緒に仕事をするときには、社内的にもChatWorkを使ったりすることもありますね。

大井田:

メールを使うこともありますか?

山本:

社外とのやり取りは、まだまだメールが多いですが、社内のコミュニケーションにメールを使うことはなくなりました。先ほどお話しした外部連携機能についても、新しいお問い合わせなどのメッセージを、メールではなくてChatWorkとSlackに送信する機能を実装する予定です。

大井田:

そのメッセージングは重要ですね。社内的なソース管理はBitbucket一択ですか?

山本:

クローズドの部分はBitbucketで、オープンソースはGitHubにしています。

大井田:

お話を伺ってると、とにかく継続することの強さを感じます

山本:

個人的には、私より長くCMSに取り組んでいる人はいないだろうという自信もあります。が、ただやめられない、というのも真実です。

大井田:

エンジニアの人たちに向けて、何か一言

山本:

今年は新しい試みとして、ブースを出すようなイベントを行なうことを考えています。コンテンツとコンテンツマネジメントシステムというくくりで、名古屋で1日開催することを企画しています。

大井田:

それもまた新しいチャレンジなんですね。本日はありがとうございました

取材を終えて

CMSというのも、もともとは「日記」から始まった、という少し前のインターネットの動きのお話はとても興味深いものでした。私はもともと2000年にこのIT分野に参入した人間なので、一部知らない世界の物語となっていたかもしれません。
それにしても、20年近いサービス提供期間という事実には感嘆せざるをえません。無料ユーザーではなく、有料サービスでいらっしゃるのですから。素晴らしいサービスを作られているな、と大いに勉強になりました。

TeamHackersでは、これから数回にわたってスクラム開発事例を個社インタビューを通してご紹介していきます。引き続き、ご購読をよろしくお願いいたします。

事例に学ぶ

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと言います。ビジネスについても同じことが言えるでしょう。
他の企業の戦略や取り組みを分析し、そこから抽出した要素を組織に取り入れてみることで、あなたのビジネスを成功に導く鍵が見つかるかもしれません。

詳細を確認する

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

同じタグのついた記事

同じカテゴリの記事