アルバイト求人情報サービスの定番アプリ「an」の開発の裏側を公開!

アルバイト求人情報サービス「an」の開発元であるパーソルキャリア株式会社(旧株式会社インテリジェンス)。「an」と言えば、アルバイト情報の定番ブランドでもあります。現在では、Webサイトとアプリ両方を運営されているわけですが、こちらは開発体制が大きく異なっているということで、今回はアプリ開発を担うanサイトBITAグループの地家(じけ)さんに、スクラム開発についてのお話を伺ってきました。

 

プロフィール:
地家さん:
Works事業部 プロダクト&マーケティング企画統括部
WorksBITA部 anサイトサービスBITAグループ
2014年新卒入社。A/Bテストツールやレコメンドの導入、サイト改修プロジェクトのPMを経験し、2016年12月からエンジニアとしてスマートフォンアプリの内製開発チームに参画。2018年1月から同チームスクラムマスター着任。

「an」のアプリ誕生を振り返る

 

 

 

 

大井田:

今年は「an」アプリの大幅リニューアルを行なわれたとのことですが、「an」と言えばアルバイト求人情報サービスのブランドとしては定着しているようにも思います。そんなブランドであるが故の開発の苦労なども想像できますが、まずは全体の開発体制を教えていただけますか?

地家:

全体のブランドという点からご説明しますと、「an」はWebサイトとアプリで共通の基盤を持っていますが、Webサイト側はウォーターフォール型。アプリはスクラム開発でという体制になっています。

もともと、開発において外注している範囲が広かったため、コストやスピードに大きな課題がありました。「○○を変更したい」と思っても、予算の確認をしたりと手間がかかることもあり、肝心のPDCAをスピーディーに回しにくく運用にとって致命的と感じられるようになってきました。

しかも、「an」アプリは5年前に公開された古い基盤の使い回しが続いていたので、経年劣化による品質低下やそれによるストアランキング低迷など多くの課題を抱えていました。

大井田:

5年前というと、2012年から2013年のことになりますか

地家:

その後、2016年の11月くらいに、開発経験のあるエンジニア数人でアプリのスクラム開発を始めたというのが、弊社のスクラム開発の始まりですね。

せっかくアプリが広く活用されているのに、ユーザーデータの分析基盤を構築できていなかったりして、ユーザーの動きに対する分析と対策が打てていない状態を改善していこうという気運が自社開発での勢いをつけたのだと思いますね。

大井田:

ん? その言い方は、当時はまだスクラムマスターではなかったということですか?

入社4年目、いきなり「スクラムマスター」になる

地家:

スクラムマスターになったのは、今年の1月からです。それまではメンバーとしてスクラムチームに参加していたのですが、スクラムマスターの役割を果たしていたものが退職することになって、私が手を上げたという事情です。

大井田:

それでは、改めてスクラム開発についてのお話を伺っていきたいと思います。

地家:

もともとは、プロジェクト開始から2週間おきに開発スプリントを回していました。2週間ごとにUIやバグの改善を繰り返し、随時アップデートも行なっていくという体制が基本です。

管理体制としては、Redmineにスクラムプラグインを導入したものがベースです。

大井田:

アプリの場合、公開アップデートのスケジュールも重要に思いますが

地家:

大きなアップデートは、2、3ヶ月ごとにというスケジュール感でしたね。小さな修正・改善は2週間のスプリントごとで行っていましたが、これからはもう少し短いサイクルで更新していけると思います。

大井田:

というのは

地家:

私がスクラムマスターになって、2週間スプリントだったものを1週間スプリントに変更しました。ひとつには、今回の大型アップデートでそれまで懸念していたことは大きく改善できているという考えがあることと、スプリントの期間を短くすることでスプリント計画の精度を高めたいという狙いがあります。

大井田:

もう少し詳しくお聞かせいただけますか

地家:

先ほど、自ら手を上げたとお伝えしましたが、もともとスクラムマスターはやってみたかったことです。が、予定よりも早くにスクラムマスターになってしまった、という自らの印象もあって、自分の中でスクラムマスターになるための知識や経験の絶対量が不足しているという意識もあります。

だから、スクラムマスター研修に参加したり、よりよいスクラム実践のために知識を身につける活動を意識しています。

大井田:

これまでのスクラムのやり方を変える必要があると感じるのは、例えばどんな課題感があるのでしょう

地家:

過去には、本来ならレビューで解決できることが長期のテスト期間を費やすことになってほとんどウォーターフォール型のようになってしまう、ということもありました。それはそれで、そうなってしまった原因も明確ではあるのですが、スピードと高品質の開発という点で、体制的にももっと改善すべきところがたくさんあると感じたことです。

今年3月、地味に大きなアップデートを実施したばかり

大井田:

3月には、速度改善のためのフロント側の実装方法を改善されたとか。こういった地味なアップデートは多くのユーザーが存在するサービスには欠かせないものですが、実はとても大変なのですよね

地家:

アプリのフレームワークはionicを使っていたのですが、速度改善を目的としてionicのバージョンを1から3に上げました。フロントのソースは全面的に書き直しとなる大きな改修でしたが、プロダクトの安定化に伴って開発に余裕ができてきたからこそ、いま取り組むべき、という声が挙がりました。

Ionicは、HTML5ハイブリッドモバイルアプリの制作に便利なフレームワークです。Cordova/PhoneGapでモバイルアプリを作る際もIonicの利用をおすすめします。
Ionicはモバイルアプリによく使われるコンポーネントを、再利用・改造できる形で用意しています。また、非常に使いやすいCLI(コマンドラインツール)が用意されているため、新規作成、コンパイル、実行、エクスポートが快適にできます。新しい機能も継続的に追加されて、単なるフロントエンドフレームワークの域を超えています。ネイティブアプリやレスポンシブWebアプリを制作する前の、プロトタイプ制作にもぴったりです。
https://www.webprofessional.jp/5-ionic-app-development-tips-tricks/

大井田:

少し話を戻しますが、1週間スプリントは具体的に曜日ごとのスケジュールが決まっていますか?

地家:

スクラムセレモニーは水曜日に集中して時間を取っています。

スプリントレビュー:計画した価値が生まれているかを確認する。 より良くするためにはどうしていくかを学ぶ
プロダクトバックログ・リファインメント:「いま」ではなく「次」さらに「その次」のスプリントの準備をする。継続実施することで、スプリントプランニングにおける計画精度を向上させることになる。
スプリント計画:プロダクトバックログの優先順位の高い項目について、目的や状況を話し合い、理解を共有 すること。

セレモニーを水曜にまとめることで、他の日は開発に集中できる状態にすることが理想です。

レトロスペクティブは、KPT手法を取り入れていますが、最近はPROBLEMやTRYが出てこなくなっています。プロダクトやチームが安定してきたということだと思いますが、もっと潜在的な課題を抽出できる方法を模索中です。

大井田:

ベロシティはどのようにしていますか

地家:

スクラム体制として、という前提で語ると、生産性の強度はそこまで高くはないです。Redmineで管理をしています、とお伝えしていますが、タスクを共有する際にストーリーポイントを記入するようにしています。この場合、メンバー一人ひとりのユーザーストーリをそれぞれ一覧化して確認するということをしています。

見積もりを「作業」で図るか、「時間」で図るかということも、課題として見えています。現在は、スプリント内で終わらなかったタスクを次へ先送りしてしまったり、スプリント期間の途中ですべて消化してしまった場合には小さなユーザーストーリーを追加で実施して調整をしています。

スプリント計画の段階では、絶対的な「時間」での見積もりを取り入れることで予実のブレをなくしていきたいと思っています。

大井田:

ところで、利用ツールについて、改めて確認です。Redmineは伺いました。コミュニケーションの面では、なにを使っていますか

地家:

ロケットチャットですね。実は、Slackではないんですよ。これは、会社としてのセキュリティ指針から判断されています。

「究極のオープンソースWebチャットプラットフォーム」を謳ったチャットツール
https://rocket.chat/

「an」アプリの今後は

大井田:

チームのみなさん、元からスクラム開発のメンバーだったのですか?

地家:

いえ、ほぼ全員スクラム未経験で加わってアプリ開発を始めています

大井田:

多くの企業でも同様なのですが、そうしたスクラム未経験のエンジニアに対してなにか研修などの試みはどのようにされているのでしょうか

地家:

そのあたりはスクラムマスターからの説明で補っているところですね。スクラムとしては、最初の体制がうまく回ったことで、機能はしているという実感が全員にあるのだと思っています。

実際に、今回のアップデートによる定量的な効果が出始めています。目標に掲げていたのはユーザーの応募数増加だったのですが、 結果的にリニューアル前の1.5倍ほど増加しました。

さらに、ストアへよいレビューも増えており、ストアでのアプリ検索でも上位表示されるようになりました。おかげさまで、DL数も順調に増えています。

大井田:

「an」と言えば、アルバイト求人情報サービスの老舗ブランドです。一方で、まさに「an」がそうなのですが、紙メディアからwebになり、さらにどんどんアプリ化が進んでいくサービスへの展望っていかがですか

地家:

まだまだこれから新しい価値を提供していく段階ではないかと思っています。
これからの、新しいアルバイトの探し方、マッチングのあり方を模索していき、社会への提案を進めていきたいですね。

取材を終えて

「an」と言えば、学生援護会という名前が思い浮かぶ世代です。「職業選択の自由〜♪」というCMも非常に印象的でもあり懐かしい話題です。

株式会社インテリジェンスとの合併もよく覚えているニュースでしたが、社名が変わってから「中の人」にお話を伺うのは今回が初めて。

お邪魔したビルには、多くの社員が働いておられ、かつご訪問される方々もひっきりなしで、冒頭の写真撮影も少し待って撮影をさせていただきました。紙からWebへ、そしてアプリへ。とは、多くのサービスが抱える課題でもあります。どのような未来があるのか、その答えを私たちも一緒に見つけていかなくてはならない、と改めて感じました。

TeamHackersでは、これから数回にわたってスクラム開発事例を個社インタビューを通してご紹介していきます。引き続き、ご購読をよろしくお願いいたします。

事例に学ぶ

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと言います。ビジネスについても同じことが言えるでしょう。
他の企業の戦略や取り組みを分析し、そこから抽出した要素を組織に取り入れてみることで、あなたのビジネスを成功に導く鍵が見つかるかもしれません。

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