リモートチームでも闘えるということを『マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた』から学んだ

マイクロソフト社で9年間務め、プロダクトマネージャーとしてのキャリアを持つスコット・バークン氏に、ワードプレス・ドットコムを手がけるオートマティック社CEOのマット・マレンウェッグ氏が「うちで働かないか?」とオファーを出しました。バークン氏はこれを引き受け、オートマティック社のチームの一つであるチーム・ソーシャルを率いることになります。
そして、バークン氏がオートマティック社で経験したことを一冊の書籍にまとめたのが今回ご紹介する『マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた』(スコット・バークン / 新潮社刊)です。オートマティック社は、完全なリモート・オフィスを実行しており、PC1台があれば、いつでもどこでも、働くことができる職場です。この経験は、バークン氏にとって今までの働き方の常識を覆すことになりました。著者が、オートマティック社から得られた教訓とは一体何か、突き止めていきましょう。

リモートオフィスに入社すると?

オートマティック社のユニークな新人採用・教育について

オートマティック社は今まで、組織が完全にフラットであらゆる階級が存在しませんでしたが、規模が拡大するにつれて、さまざまな弊害も見られるようになりました。例えば、マレンウェッグ氏によって直接的に管理できる人数を超えたことによる意思決定プロセスの乱れ、などが問題となりました。そこでマレンウェッグ氏は、社員50人を10のチームに分けてそれぞれのチームに1人のリーダーを置く、チーム制を実行することになります。そして驚くべきことに、それらのチームのリーダーに就任する人を、外部から雇用するというチャレンジもおこなったのです。そのような背景があり著者は、同社のチームリーダーとして参加することになったのです。

オートマティック社では、ユニークな新人社員教育を導入していました。新入社員はまず顧客と直接的に接する「サポート部門」に回されて、リモートで働き、訓練を受けることになっています。そして、その働きぶりを見て新しい社員への仕事の適性を判断するというわけです。場合によっては、雇用を見直すことも十分あり得ます。余談ですが、日本の新卒採用プロセスでは、面接をすることによって採用を判断している企業がほとんどだと思います。しかし、新入社員が職場に上手くなじんで、成長することができるかについては、実際に現場で働かせてみるのがもっとも有効な手段でしょう。オートマティック社は、その点をよく理解していました。

さて、「サポート部門」に加わった著者は、顧客サポートの仕事をこなしつつも、早くチームと仕事がしたいと息巻いていましたが、マレンウェッグ氏から衝撃的な事実を知らされることになります。それは、著者のサポート部門における成績が悪いという知らせでした。リモート社員が生産的に働くことができるかを判断するためには、さまざまなデータを集めて、分析する必要があります。そのためオートマティック社においても、社員を監視するシステムが導入されていたのは当然でしょう。成績の悪い著者はもちろん落胆しましたが、何とか仕事をやり遂げることができ、後から振り返ると、嫌でも仕事を学ぶことができたと、その効果について認めています。

オートマティック社で利用するコミュニケーション方法とは

リモートで働くということには一長一短ありますが、その中でも特筆すべきは「社員同士のコミュニケーションの質」です。やはり、私たちは直接会って話しをする方がオンラインで会話するよりも上手に意思疎通することができます。ですので、リモート・オフィスを実現したいのであれば「社員同士のコミュニケーションの質」をどのように向上できるのか、しっかり考える必要があります。著者によるとオートマティック社のコミュニケーションで利用されるツールは次の4つです。

  1. P2:75%
  2. IRC:15%
  3. スカイプ:5%
  4. メール:1%

さすがにブログを扱う企業であるため、社内コミュニケーションツールの「P2」と呼ばれるブログが大人気で、全体の75%を占めています。次に人気なのが、古くからあるチャットツールであるIRCで、全体の15%で使われています。スカイプは5%です。そして驚きなのが、メールが1%しか利用されていないということです。ほとんどの企業の社内コミュニケーションツールといえばメールが使われているので、オートマティック社の仕事環境が世間一般とどれだけ異なるかがわかるでしょう。

企業文化はビジネスをする上で欠かせない

企業についてしっかりと実態を捉えたいのであれば、その文化がどのように機能しているかについて知る必要があります。もしその企業の文化によっておこなわれていることを、そのまま別の文化で実践しようとしても、同じような効果は期待できません。

オートマティック社の文化は、オープンソースプロジェクトである「ワードプレス」コミュニティの文化に大きな影響を受けています。ワードプレスが掲げる理念は「表現の民主化」です。そしてそれを実現するために「透明性」「実力主義」「長命」という文化が根付いています。

あらゆる文化は小さな種から育つ。また、たったひとつの決定で文化ができるわけでもない。リーダーと貢献者の頻繁なやりとりの中で、あることが強化され、あるものが排除されて、そこから文化が立ち現れるのだ

一方、著者はオートマティック社の文化に根付いた問題点を6つ指摘しています。

それらは、

  1. 割れ窓理論の功罪
  2. 大きな/面倒くさいプロジェクトを避ける傾向
  3. P2の奇妙な副作用
  4. 保守的なアイディア
  5. いくつかの不透明さ
  6. 使い勝手を評価する方法がない

1つ目、割れ窓理論とは、小さな問題にすぐに対処することで、大きな問題が生じるのを防ぐ犯罪学の理論です。オートマティック社では、問題が起こるとすぐにその対処にあたるという文化が根付いています。これはいいことなのですが、問題に優先順位をつけることが疎かになるという弊害が起こります。これによって社員が、重要なことよりも新しいものに反応しがちになってしまいます。

2つ目、社員には明確な担当とスケジュールが与えられないため、大きなかつ面倒くさい仕事が後に残ってしまう傾向があります。少しずつ開発を進めるというやり方もいいのですが、プロジェクトによっては必ずしもそれが適しているとは限りません。そのため、重要な問題が見過ごされないように注意する必要があります。

3つ目、P2は効率の良いコミュニケーションをとるための様々な長所がある一方、副作用も存在します。例えば、記事を投稿して特に反応がなければそれが暗黙の了解になるのかということや全社員の目に触れてしまう故に投稿をためらう社員の存在、などが挙げられます。

4つ目、オートマティック社には、斬新で突拍子もないようなアイディアを思いつく人が少なく、保守的です。なぜ社員が保守的なのかについては明確な答えはありませんが、リーダーがもっと仕事をして戦術ではなく戦略を考案して提案して、チームメンバーを巻き込むなど、変化を先導すべきです。

5つ目、オートマティック社ではリーダーに雇用基準をもっと知らせて、巻き込んでいく必要があるのではないかと著者は指摘しています。確かに、採用プロセスにチームのリーダーを関わらせることで、より適した人材を採用できる可能性は高まるでしょう。

6つ目、オートマティック社では、ワードプレス・ドットコムの使い勝手を評価する方法がほとんど存在しません。しかし、ユーザーにとっての使い勝手であるユーザビリティは、サービスを提供するにあたり無視することができないほど重要なことです。そのため、オートマティック社はそれらについて何らかの対策を講じる必要があります。

リーダーによるプロジェクト管理術

リーダーを評価する手法については、探せばいくらでも出てきます。著者の主張は「リーダーは生産し出荷したものの質によって評価されるべき」としています。そしてリーダーとしての役割は「メンバーが生み出す価値を最大化」できるように分担を考えることです。チームの人数については、4人から6人で構成されているのが好ましいといいます。

クリエイティブなチームをマネジメントする秘訣の一つとして著者は「ユーモアを忘れない」ことと述べています。もし直接的な言葉でメンバーに対して非難してしまうと、メンバーはヤル気を失ってしまいます。そのためメンバーを笑わせつつも、伝えたいことはしっかり伝えるというスキルが必要です。

人はみな一対一で話しかけたときには別人になる。これがわかれば、人生における成功の秘訣をひとつ手に入れたようなものだ。一対一なら相手の注意を独占することができる。

リーダーは、メンバーの一人一人とコミュニケーションをとることで、信頼を獲得していきます。特に、オートマティック社のようなリモート環境においては、メンバーからの支持を集めることが通常よりも難しいため、リーダーはそのことを入念に実行していかなくてはいけません。

どれほど大きなプロジェクトも小さなプロジェクトの積み重ねにすぎない。大事なことは方法論を固定せずに、定期的に思考を切り替えることだ

プロジェクトを進めるためには、チームが柔軟であることが求められます。確かに、計画を立てることは重要ですが、それに時間をとられていてはなりません。まず動き始めることで、行く先はわからなくても、新しいデータを得ることができ、そのデータによって次の決定ができるというプロセスが生まれます。

まとめ:リモートで働くには信頼が鍵となる

ここまで、著者がオートマティック社で経験したことを中心に、リモート・オフィスの是非について論じてきました。一般的には、リモート・オフィスはチームのマネジメントを難しくするといわれており、すべての企業が今すぐリモート・オフィスを導入することは現実的ではありません。リモート・オフィスを成功させるには「信頼」が重要となってきます。そのため、リモート・オフィスを実現にうつす前に、社内のメンバー(経営層も含む)はお互いのことを信頼し合っているかどうか問い直さなくてはならないでしょう。本書は、体験談方式で書かれており、読んでいてすごく楽しい本の一つです。興味を持った方はぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

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