そのビジネスの常識にちょっと待った!『小さなチーム、大きな仕事』から得る10の洞察

「Ruby on Rails」の開発元として知られるアメリカのソフトウェア企業Basecamp(旧37 Signals)の創業者によって書かれた『小さなチーム、大きな仕事――働き方の新スタンダード 』(ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)は、ビジネスの世界で常識とされている考え方に鋭く突っ込みを入れ、経験則に基づいた実践知を少し挑戦的な言葉で書き連ねた刺激的な本です。
「失敗から学ぶな」「競合相手より下回ろう」「基本的にノーと言おう」など、知的好奇心をくすぐるキャッチコピーが次々と登場して「え、どういうことだろう?」と思わず一心不乱にページをめくってしまうような魅力がこの本にはあります。
この記事では、本の内容の中から特に心に残った10の考え方に焦点を当て、考察していきます。

その1:計画は予想に過ぎない

計画なしに仕事をするのは恐ろしく思えるかもしれない。しかし、現実と折り合わない計画にしたがうのは、もっと恐ろしいことだ

ほとんどの企業は、将来の見通しをつけるために、長期のビジネスプランを作成します。しかし著者は、それはただの幻想であると切り捨てています。なぜなら、未来の計画を立てるために考慮すべきたくさんの要素は不確実であり、コントロールできないからです。ただそれにも関わらず多くの企業は、計画を立てることでそれらをコントロールしたような錯覚に陥っていて、現実にそぐわない計画に従うことによって不利益を被っているといいます。

著者は決して、将来のことを考えるなと言っているわけではありません。そうではなく「計画」に重きを置きすぎることに警鐘を鳴らしています。実際のビジネスは、さまざまな状況の変化に対して素早く柔軟に対応することが求められるため、計画を遵守することは足枷以外の何物でもありません。「計画」は「予想」と言葉を置き換えて考え、臨機応変に対応できる姿勢を整えることが重要です。

その2:制約を受け入れる

あれがない、これがないと嘆く前に、今自分ができることは何なのかを考えてみよう

新しいことを始める時に、いつも自分にないものをひとつひとつ数えて、それらを言い訳にして行動に移さない人たちがいます。いわば「制約があるから、行動が起こせない」という理屈です。しかしながら、そのような「制約」があることはむしろ「武器」になり得ると、この本では説明されています。この理由は、手持ちのカードで勝負をしなければならない状況が、人間の持つ「想像力」を刺激して、良い方法を考え出す要因になるからです。

例えば「俳句」について考えてみましょう。俳句には制約が2つあります。一つ目は「五・七・五」で構成されていること。二つ目は「季語」が入っていることです。そして重要なことは、この制約の中でゲームをしようと考えることによって、想像力に富んだ詠んだ者の心に響く句が出来上がるのです。もしこのような制約がなければ、俳句だからこそ生まれた優れた作品の数々は存在しなかったでしょう。

その3:キュレーターになれ

博物館を素晴らしいものにするのは、壁に何が掛かっていないかなのだ

選択するときには必ず、除外されるものが生まれます。当然のことです。例えば、美術館の展示には必ずキュレーターと呼ばれる人たちが、展示会で並べる作品を選定します。そして勿論、選ばれなかった作品が存在します。この時に大事なことは、何が真に必要かを見極め、削ぎ落とし、シンプルにすることです。そのためには、ある作品を選んだ理由よりも、他の作品を選ばなかった理由を突き詰めることが必要です。
市場に出回る製品の中には、ユーザーが求める以上の機能を搭載しているものも少なくありません。企業にとっては「多ければ多いほど良い」と考えているため、自信を持って製品をリリースするのですが、ユーザーは自分のニーズを満たすために「少なければ少ないほど良い」と考えることがしばしばです。ユーザーに製品を気に入って欲しいのであれば、真に必要な機能以外は搭載しないことが求められます。

その4:変わらないものに目を向ける

流行は去り行く、という事実を忘れないでほしい。変わらない機能に焦点を当てれば、時代遅れなんて言葉はまったく関係がなくなるはずだ

多くの企業は、最新のトレンドや新しい技術に飛びついてしまいがちです。しかしそれらは、絶えず変化するものです。著者は、ビジネスの中心に置くのは時を経ても変わらないものであるべきだと論じています。流行にはいつか終わりがやってきますが、人々の「安全性」「手軽さ」「実用性」などの基本的な欲求は、たとえ30年経ったとしても変わることはないでしょう。

確かに、新しい産業の成長を見据えて投資をしておくことは有効な戦略です。ただ著者が主張しているのは、新しいことを追い求めることを目的にしてはならないということです。もし新たな産業に参入したいと考えるならば、その動機は企業が軸にする中心的な価値観に基づいてる必要があるでしょう。

その5:邪魔が入る環境では生産性が上がらない

あなたの一日は、仕事の中断に包囲されている。反撃するかどうかはあなた次第だ

著者は、仕事を完了させるためには長時間の連続した時間が不可欠であると述べています。普段オフィスで仕事をしていると、仕事を中断させる要因がいくつもあることに気づくでしょう。電話、雑談、会議など、例をあげたらキリがありまえん。これらの中断によって、あなたの仕事の生産性は確実に蝕まれています。

仕事に集中するために、眠い目をこすって早朝や深夜の一人きりになれる時間帯に作業をする人は多いですが、そのような時間帯以外でもルールを設けることで、集中モードになれる時間を作り出すことは可能だといいます。具体的には、仕事以外のものをすべてシャットダウンして作業に集中する時間を一日の中に組み込むのです。現実的には、それを実行するためにはチームメンバーの理解を得ることが必要でしょう。仕事を終わらせるため、としっかり伝えれば、きっとチームメンバーも協力してくれるはずです。

その6:競合相手が何をしているかなんて気にしない

他人のことを心配するのに時間を費やしていると、その時間をあなた自身の向上に費やすことができない

一般的に、企業は競合他社の戦略を分析して、それに打ち勝つような施策をおこなうべきだといわれています。一方、著者が本書で述べていることはそれを真っ向から否定しています。なぜなら、競合他社の状況は静的なものではなく動的なものであり、完全に掌握することは不可能であることに加えて、彼らの一挙一動に絶えず注目していなくてはならないという心理的圧力は、新しいことを生み出すことの害になるからだといいます。このような理由から、競合他社の戦略を掌握するのに時間を費やすのであれば、自分たちのビジネスが抱えている課題を探して、それを解決するために時間を費やす方が賢明であると著者は主張しています。

その7:造花が好きな人はいない

僕たちはいつまでも変わらないプラスチックの花より、しおれてしまう本物の花が好きなのだ

世の中には「プロフェッショナル」であることは、高級なスーツや時計を身にまとい、難しい言葉や理屈をこねくり回すことだと考えている人たちがたくさんいます。きっとみなさんの周りにもそのようなタイプの人がいるはずです。しかし、彼らの多くはハリボテです。そして人々は、それよりももっとリアルなものを求めています。そのため、自分を虚飾して完璧に見せようとするのではなく、不完全でもいいからありのままの姿を見せることが大切になります。それを魅力に感じてくれる人はきっと少なくないはずです。

その8:ドラッグの売人の方法は正しい

ドラッグの売人は、抜け目のないビジネスマンだ。彼らは、自分の商品がすばらしいことを知っているので、先に少量を無料で提供する。あとで初期投資以上のものが戻ってくるとわかっているのだ

著者は、自分たちの製品を最初に無料で体験してもらい、顧客が手放せなくなるようにすることが効果的な方法だと述べています。無料で提供して、後できちんと見返りが得られるか不安に思う気持ちもわかりますが、自分たちの製品に自信があるのであれば、試す価値は十分にあります。もし、どうしても心配だというのであれば、それは提供する製品の質がまだまだ十分でないということを自覚しているからです。そのような場合は、製品の質を向上する努力をすることが先決です。

その9:「一夜にして成功」はない

あなたはみんなが注目するような特別な存在ではない。誰もあなたを気にかけない。少なくとも今は。そんなものだ

大きな成功はすぐには生まれないと、著者は語ります。「一夜にして成功」のエピソードの裏には、それらを支え続けた人たちが必ず存在するとも。結局、無名の人が優れたことを成し遂げるには近道はないということです。不安に押し潰れそうになりながらも、ぐっと堪えて努力をコツコツと積み重ねることが唯一の方法なのです。そのうち、あなたの努力を評価してくれる良識ある人々が少しずつ増えていくはずです。「一夜にして成功」は、まやかしです。

その10:決定は一時的なもの

まだ起こってない問題を作ってはいけない。現実に問題になってから考えればいいことだ。多くの「もしも」は起こらない

今日の決定は永遠ではない。決定は、ある一時点においてどうするかを考えることに過ぎません。周りの状況が変化したら、それに合わせて方針を変更すれば良いのです。小さなチームの利点の一つは、変更をしやすいことです。これが大きな組織だと、様々な手続きが必要となり、変化への対応が遅れてしまいます。現在、ビジネスの環境は未だかつてないほど急速に変化を遂げています。そのような中では、小さなチームが優位性があるのです。

まとめ:小さなチーム、大きな仕事

この本の筆者はなかなか毒舌ですが、そのアドバイスはビジネスをしようとする人に対する優しさが感じられます。チーム戦略を理論的に説く書籍は多いですが、それが実践に生きるか疑わしいこともあります。その点、この本は大変実用的であり、明日からすぐに取り入れることができる示唆に富んでいます。この本を読めばタイトルの真意は、小さなチーム「でも」大きな仕事ができるのではなく、小さなチーム「だから」大きな仕事ができるということに気づくでしょう。一読の価値ありです。

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