プロジェクトマネジメントの手法とは? 代表的な13の手法と成功するコツを解説

プロジェクトを成功に導くためには、適切なプロジェクトマネジメントが欠かせません。しかし、プロジェクトマネジメントと一口に言っても、そこにはさまざまな手法が存在することをご存じでしょうか。

プロジェクトマネージャーではなくとも、プロジェクトマネジメントの手法や考え方は日々のタスク運用に取り入れたいものばかりです。ここでは、プロジェクトマネジメントの代表的な手法と成功させるコツについて、初心者にも分かりやすくご紹介します。

プロジェクトマネジメント手法の変遷について


プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを達成するために予算やスケジュール、人員リソースなどを管理することを指します。それを実行するのがプロジェクトマネージャー(PM)の役割であり、計画書の作成やメンバーのスキル把握、進捗確認などその業務は多岐に渡っています。そのため豊富な経験や高度なスキルが必要とされ、プロフェッショナルのプロジェクトマネージャーになるための資格や試験もあります。

もともとプロジェクトという言葉は、国家的なレベルの大規模な活動を指すことが多かったようです。品質やコスト、納期などの管理は単純にプロジェクトに付随する要素と捉えられ、独立したものではありませんでした。その後、冷戦時代のアメリカ国防省が、軍事プロジェクトのスピードアップを目指してプロジェクトマネジメントの手法を開発したことにより、現在のようなプロジェクトマネジメントの概念が確立したと言われています。
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プロジェクトマネジメントの代表的な手法

プロジェクトマネジメントにはさまざまな手法がありますが、ここでは国内外で広く活用される13の手法をまとめました。

PMBOK

プロジェクトマネジメントの教本とも呼ばれる「PMBOK」は、プロジェクトマネジメントのノウハウや知識を初めて体系立ててまとめたものです。プロジェクトの分野や業界を超えて適用できる知識体系を定めることによって、プロジェクトマネジメントの概念や用語を設定しています。

PMBOKでは、マネジメントを必要とする10の要素と5つのプロセスに分類し、プロジェクトマネジメントを行います。10の要素は、スケジュール管理、コスト管理、品質管理、要因管理、リスク管理、コミュニケーション管理、調達管理、ステークホルダー管理、スコープ管理、そして統合管理からなります。それぞれを適宜、「立ち上げ・計画・実行・管理・終結」という5つのプロセスに分けて、QCD(品質・コスト・納期)の目標値を達成できるよう管理する方法です。

近年では、プロジェクトマネジメントの世界標準であり、マネジメントをする上でやるべきことのチェックリストとして広く活用されています。

WBS(Work Breakdown Structure)

「WBS」は作業分解構成図を意味します。プロジェクト全体を細かなタスクに細分化し、ツリー状のプロジェクト設計図を作成します。特にプロジェクトの計画段階において、必要なタスクを作業のカテゴリーごとに洗い出す時に有効な手法で、プロジェクトの全体図を把握したり、作業工程を確認したりするのにも役に立ちます。

大枠となるタスクを小さなタスクに分解し、開始日や終了日、担当者や工数の見積もりなどを記載することで、やるべき作業が見える化されます。ただし、作業を進めていく時間軸が直感的に分かりにくいというデメリットがあります。

ガントチャート

プロジェクトマネジメントなどで用いられる棒グラフの表を「ガントチャート」と言います。機械工学者であり経営コンサルタントのヘンリー・ガントによって考案されました。

表の縦軸に作業の単位や作業内容、担当者、開始日や終了日などを置き、横軸には日時や時間を記載します。工程やタスクごとに作業開始日や作業完了日を棒状グラフで示すことで、プロジェクトを視覚的に理解することができます。

プロジェクトのフェーズを細かい作業単位まで分解し、ツリー構造を用いて階層を表示することで、プロジェクト全体の作業の流れや進捗状況が分かります。時間軸が分かりにくいというWBSのデメリットを補うために、ガントチャートを併用することが多くあります。

マインドマップ

「マインドマップ」は頭の中にあるアイディアやイメージなどを、思考の流れが分かるように文字やイラストを用いて表した図のことを言い、樹形図のような形をしています。イギリスの教育者、トニー・ブザンが40年以上前に考案した手法で、日本では10年ほど前から、主にビジネスパーソンや教育関係者の間で注目されるようになりました。

漠然としてまとまらない頭の中を可視化することで整頓でき、記憶の定着やアイディアを引き出してくれる手法です。タスクや想定されるリスクの洗い出しや整頓、進捗管理などに活用でき、プロジェクトを俯瞰することに優れています。

着想を文章化する必要はなく、キーワードの書き出しのみで作成できるので、ひらめきを逃すことなくアイディアを引き出すことができるでしょう。

カレンダー

プロジェクトマネジメントに慣れていないメンバーでも馴染みやすい手法が、カレンダーを使用したプロジェクトマネジメントです。見慣れたツールゆえ、導入の際の教育・研修コストはほぼかからないと言えるでしょう。


プロジェクトマネジメントにおいて、スケジュールの管理は非常に重要です。納期までの日数や工程を確認する時や、タスクのリミットを逆算したい時など、スケジュールの確認や決定、調整において、常にカレンダーを見て業務を進めているはずです。

カレンダーはプロジェクト全体のスケジュールを俯瞰したり、タスクの期日をまとめて確認したりする時に役立つツールです。

PPM

「PPM」は、プロジェクトポートフォリオ管理の頭文字を取ったもので、組織全体のプロジェクトを集中管理する方法です。プロジェクトをポートフォリオ(集合体)として捉え、広い視野でプロジェクトを把握できるのが特長です。

社内にある複数のプロジェクトを総じて分析し、プロジェクトを横断的に見た上での優先順位やリソースの配分を行うことができます。また、全体像を把握することで、最適な意思決定を行うことができ、プロジェクトにスピード感を持たせることができます。

P2M(Project & Program Management)

「P2M」のPは、プロジェクトとプログラムを意味し、それらをマネジメントする手法をP2Mと呼びます。P2Mは日本初のプロジェクトマネジメントの手法で、プログラムマネジメントの思想を取り入れています

プログラムマネジメントは、複数のプロジェクトを統合して捉え、全体管理を行う管理手法のことを言います。PMBOKなどのプロジェクトマネジメントの手法にプログラムマネジメントを加えると、複数のプロジェクトを同時に管理できるようになります。

プロジェクトを単体で管理するだけでなく、複数のプロジェクトを広い視野で把握し、プロジェクトごとの連携体制や相互作用、依存関係を統括的に管理し調整を行う手法です。

PERT(Program Evaluation and Review Technique)

1950年代にアメリカ海軍で提唱された工程管理の手法が「PERT」です。プロジェクトを工程に分け、必要な期間や作業のプロセスを図式化することで、プロジェクトに必要な工程の依存関係を見つけ出します。

プロジェクトマネジメントにおいては、ひとつの工程に遅れが発生すると、それが致命傷になり、プロジェクト全体の遅れに発展することは少なくありません。プロジェクトを計画通りに進めるためには、プロジェクトにおいて極めて重要な工程(クリティカルパス)をあらかじめ見つけ出し、遅れることがないように進行することです。

PERT図は重要な工程を見える化できる図です。並行して行うべき作業や工程に着手するベストなタイミング、最も早く取り掛かれるタイミング、作業に最も遅く取り掛かれるタイミング、そして余裕時間を割り出すことができます。

PERT図を作成することで工程を見える化し所要時間を見積もることができるので、クリティカルパスを見つけられるのです。

QFD(Quality Function Deployment)

品質機能展開とも呼ばれる「QFD」は、日本の製造業で生まれた品質管理手法です。クライアントのニーズを洗い出し、製品開発に関連するさまざまな情報や業務の関連性を見える化し、総じて管理する手法で、信頼性展開、技術展開、コスト展開、営業展開などの方法を含んでいます。

QFDは、求められる品質と特性の関係を見える化した二元表で表します。工程ごとの目標や課題を見える化し、クライアントの期待に応えられるような製品を確実に開発するために有効です。目標とするクオリティやニーズ、クライアントにとっての価値を明確にして、クライアントの潜在的なニーズを掘り下げることも可能です。

的確な品質機能展開表は、製品を開発する時間の短縮やコストカットのほか、プロジェクトがスタートしてからの変更を最小限にすることが期待できます。

進捗管理 

進捗管理は、プロジェクトのスケジュールとタスクの進行度合いの差異をリアルタイムで把握し、計画にズレが生じた際には計画の見直しやスケジュールの軌道修正を行う管理手法です。プロジェクト達成まで定期的に行う必要があります。

多くの場合、各タスクを担当者ごとに割り振ることで、より細かく「誰が、どこで、どの程度の」進捗を出しているかを把握できるようにします。

進捗管理をすると、計画の見直しやスケジュールの軌道修正が可能であることはもちろん、プロジェクトにおける問題や課題を見つけ出すこともできます。プロジェクトマネジメントに欠かすことのできない要素と言っても過言ではないでしょう。

ウォーターフォール

その名の通り、水が上から下に流れるように作業の工程を順番に進行する手法です。システム開発などの分野では古くから使用されてきた考え方で、例えば、要件定義から設計、開発、テスト、運用……というようにあらかじめ時系列順に工程を設定し、それを一段階ずつ進めていきます。

比較的長期間にわたるプロジェクトで用いられる手法で、全体の進行状況が把握しやすいというメリットがありますが、プロジェクトの途中で方針の変更があった場合、変更や後戻りがしにくいというデメリットもあります。

アジャイル

「アジャイル」とはすばやいという意味で、「イテレーション」と呼ばれる1〜4週間単位の短い期間でプロジェクトを区切って管理する手法です。イテレーションごとに達成目標を掲げ作業分担や計画を設定し、イテレーションを繰り返すことでプロジェクト全体を進めていきます。

プロジェクトの途中で仕様の変更が生じることを前提としており、クライアントのニーズや方針の変化にも柔軟に対応しやすいというメリットがありますが、全体的な進捗管理が難しいというデメリットもあります。そのため、全体のスケジュールを意識することが重要であり、比較的短期間のプロジェクトにおすすめの手法です。

CCPM(Critical Chain Project Management)

CCPMは「クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(Critical Chain Project Management)」の略で、比較的大型のプロジェクトにおいて、スケジュールを遵守した上でのプロジェクト達成を目指す管理手法です。

CCPMでは、プロジェクトの各タスクのスケジュールや予算を最低限に抑え、その分で生じた余裕をプロジェクトそのもののバッファに充てておきます。それぞれのタスクにバッファを設けてしまうと、どうしてもバッファを含んだ計画で作業をしてしまい、全体のスケジュールが間延びしてしまいます。

CCPMでプロジェクトを管理すると、スケジュールの間延びを防ぐことはもちろん、結果としてスケジュールの短縮にもつながります。また、もし作業が遅れてしまっても、最終的なバッファを消費することで調整が可能です。

しかし、そのためにはバッファを持たせられるだけのスケジュール作成が必要となり、どの程度のバッファを設定するかにもマネージャーの力量が問われることになります。

プロジェクトマネジメントを成功させるためのコツ

プロジェクトマネジメントにはいくつかのコツがあります。意識して取り組むことでプロジェクトマネジメントの効率は向上し、意義のあるものになるでしょう。

目標・目的の設定

ゴールの見えないプロジェクトではスムーズな進行や安定した品質は叶いません。なんのためのプロジェクトなのか、どんな成果を求められているのかなど、目標や目的をチーム全員が認識できるようにしましょう。

この時、ぼんやりとした曖昧な目標・目的にすることは避け、具体的な期日や数字などでイメージができるように提示することがポイントです。

リソースの確保

目標や目的に対し、達成可能なリソースを確保する必要があります。プロジェクトの性質や内容を把握した上で、プロジェクトの達成に必要なリソース(人材、技術、時間、予算など)を確保しておきます。

現在のチームが持ち合わせる体制では不足する場合、追加や補充を行います。タスクの分担やスケジュール、予算などに大きく影響するため、プロジェクトが始まる前に、必要なリソースと持ち合わせているリソースの差をどれだけ埋められるかが、プロジェクトを成功させるためのコツなのです。

タスクのリストアップ

プロジェクトに必要なタスクをリストアップし、優先順位をつけます。プロジェクト開始前にどれだけ細かく洗い出しているかがポイントで、想定と実際の誤差がないほど的確なスケジュールやリソースを用意できます。

また、メンバーにとってもタスクを詳しくリストアップしておくことで、プロジェクトの全貌や自分の役割をイメージしやすくなるでしょう。

役割や責任の所在を明確に

タスクへの重複や対応漏れを防ぐために、メンバーごとの役割や責任の所在を明確にしておきます。タスクを細かく分解するほど役割分担も的確になり、自分だけでなくチームのメンバーそれぞれの役割を把握しやすくなります。

また、プロジェクトの規模が大きく、関係するメンバーが多ければ、個々の主体性が損なわれることが予想されます。そのため、責任感やモチベーションがアップするような役割を持たせ、メンバーの当事者意識を高めます。役割や責任を与えた結果、チームのメンバーは自分の存在価値を見出すことにもつながり、チームの士気も高まるでしょう。

リスクと対策を考える

どんなプロジェクトであってもリスクはつきもの。起こってからではなく、先回りしてリスクになりうるポイントを洗い出し、対策を練っておきましょう。リソースの予期せぬ欠如やクレームなど、さまざまなリスクが考えられます。

しかし、極めて小さなリスクにまで目を向けてしまうとキリがありません。リスクが発生する可能性が高いもの、そして影響の大きいものを優先し対策を考えるようにしましょう。

適切な進行管理

納期や品質を保ちながらプロジェクトを達成するには、リソースに余裕を持たせておきます。進行管理のために用意するスケジュールもギリギリに組むことはせず、もしものトラブルに備え、バッファを持った管理を行いましょう。

また、メンバーの特性に合わせたスケジューリングやリマインド、クリティカルパスを意識した進行管理もプロジェクトを成功させカギを握ります。メンバーの働き方やパーソナリティを理解しておきましょう。

また、プロジェクトマネージャーが指揮を執らなくても、定期的にプロジェクトの進捗を共有したりフィードバックしたりするような仕組みを作ることで、メンバーが常にプロジェクトの進行具合を把握できます。

コミュニケーションの促進

チームの一体感や団結を生み出すためにコミュニケーションを促すこともプロジェクトの成功には欠かせません。プロジェクトを進める過程では、メンバーに迷惑をかけてしまうようなミスや、立場が上の人へ意見をしなければならないシーンがあるでしょう。そんな時に必要なのが、チームの良好な関係性です。

メンバーと話をする機会を持ち、得意なことや仕事のスタンスを知ることで、信頼関係を構築しましょう。その上で、メンバー同士のコミュニケーションを促進する場を作るなどし、メンバーの関係性を深めていきます。

そうすることで、率直な報告・連絡・相談や遺憾なき意見交換、メンバーへの配慮ができる関係性が構築され、滞りなくプロジェクトが進行するでしょう。

情報共有の徹底

チーム間での情報共有をすることで、今プロジェクトがどんな状況なのか、次にすべきことは何かなどの進捗状況が把握できることはもちろん、問題が発生してもいち早く気がつき、対処ができるようになります。

情報が共有されず個々で淡々とタスクを進めるだけでは、業務の俗人化が起きかねません。プロジェクトに関連する情報は、メンバーの誰もが必要な時に取り出せるようにする必要があります。

近年ではリモートワークが普及し、チームのメンバーがそれぞれの拠点から業務を行うことも少なくありません。プロジェクトマネジメントツールなどのオンライン上で共有できるツールを利用し、どこからでもアクセスできる体制を整えると良いでしょう。

成功している最新の事例紹介

プロジェクトマネジメントの手法を適切に活用することで、成功を遂げたプロジェクトは多数あります。実際にどのようにプロジェクトマネジメントに取り組んでいたのか、具体的な事例について見ていきましょう。

あるソフトウェア開発会社の事例

進捗管理を各メンバー任せにしていたところ、納期ギリギリに遅れが発覚。それを機にプロジェクトマネジメントにCCPMを導入しました。それによりメンバーそれぞれのリソース状況や、マルチタスクを把握できるようになりました。

誰に負荷がかかっているのかやプロジェクトの遅れ具合が明確になったことで、メンバー間の調整や対策が打ちやすくなりました。

あるアプリケーション開発会社の事例

必要な機能や仕様が市場のニーズに合わせて常に変化していくようなインターネットサービス会社は、アジャイルを採用した開発スタイルとの親和性が高いと言えます。

ある小規模のアプリケーション開発会社では、チームメンバーの人数も少なく、少人数で短い作業工程を繰り返す、アジャイル手法により開発を進めていきました。それによってチーム内でコンセプトの確認やクオリティのチェックを頻繁に行うことができ、プロジェクトの開発もスムーズに進みました。

「プロジェクトマネジメントの手法とは? 代表的な13の手法と成功するコツを解説」についてのまとめ

プロジェクトを完成に導くための方法の一つとして、プロジェクトマネジメントの各手法が用いられていますが、そこに正解はありません。

プロジェクト達成のために何が最適かを見極めることが重要であり、プロジェクトの種類や規模、メンバーのスキル、使用するツールなどによって、マネジメントの手法も変わってきます。

これまでたくさんのプロジェクトを成功に導いた、プロジェクトマネジメントの手法が数多く存在します。自分たちのチームやプロジェクトにあったものを探していきましょう。

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